4 食品照射

 原子力委員会は,昭和42年9月,食品照射の実用化を促進すべく,その研究開発を原子力特定総合研究に指定し,食品照射研究開発基本計画を策定した。これに基づき現在,国立試験研究機関,日本原子力研究所,理化学研究所等において研究開発が進められている。
 この研究開発の推進にあたっては,各実施機関の関係者,学織経験者及び関係行政機関の関係者からなる「食品照射研究運営会議」を原子力局に設置し,研究計画の調整成果の評価などを行い総合的な研究開発が進められるよう図っている。
 対象品目としては当初馬鈴薯,玉ねぎ及び米であったが,昭和43年7月に,小麦,ウインナーソーセージ,水産ねり製品,みかんを追加し,7品目とした。
 食品照射研究運営会議は,昭和48年7月これまでの研究成果をとりまとめて「食品照射研究開発中間報告書」を原子力委員会に提出した。原子力委員会は,この中間報告等に基づき研究開発の進捗状況について審議を行った結果,食品照射研究開発基本計画では当初昭和49年度完了を目途としてきたが,研究開発の現状を勘案して,昭和48年10月,研究開発を昭和52年度まで期間延長することを決定した。

 研究開発状況は,馬鈴薯については,昭和46年6月所期の成果を達成し,昭和47年8月放射線照射が許可となった。これを契機に農林省では「農産物放射線照射利用実験事業」として馬鈴薯の生産地照射をとりあげた。この事業により北海道の士幌馬鈴薯運営協議会が日本原子力研究所の技術指導のもとに照射施設の建設に着手し,昭和48年12月に完成,直ちに操業に入り年度内に約1万5千トンの照射が行われ,これらの馬鈴薯は4月〜5月の端境期に市販された。今後は市場価格の安定に寄与するものと期待されている。
 その他の品目については昭和48,49年度には,基本計画に従って各実施機関がそれぞれの研究テーマについて前年度に引き続き研究開発を積極的に行った。
 玉ねぎ,米については,照射効果の試験は終了し,安全性試験を実施中である。小麦については,サイロ型照射装置を用いて,流動試験,照射試験を行うとともに,照射小麦のパンやめんに対する二次加工適性について検討が行われた。
 ウインナーソーセージについては,ネト発生を1週間抑制するのに必要な線量を照射しても品質が劣化しない照射方法を確立するとともに,安全性について,実験動物に与える場合の形態,添加量を決定し,毒性試験を開始している。さらにウインナーソーセージ,かまぼこの実用照射に資するためパッケージ内の線量分布のバラツキを少なくする照射方法について検討が行われた。
 みかんの照射については,電子線エネルギーが照射効果に及ぼす影響等について検討がなされた。
 また,食品照射研究開発のための施設整備については,日本原子力研究所高崎研究所において,食品照射共同利用施設として,昭和46年9月に食品照射研究棟が完成し,ついで昭和48年12月食品ガンマ線照射棟が竣工し,照射技術の研究開発が進められている。


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