3 使用済燃料の再処理

 原子力開発利用長期計画によると,原子力発電の進展に伴い,使用済燃料の排出量は昭和55年度には年間約700トン(ウラン量)昭和60年度には同じく約1,600トンに達するものと予想される。
 原子力発電所から排出されるこれらの使用済燃料を再処理してウラン及びプルトニウムを回収し,これを核燃料として再利用できることは原子力の大きな特長である。現在開発中の新しい動力炉もプルトニウムの生成率を高めて核燃料の一層の有効利用を図るものであって,再処理施設なしにはその機能を十分に発揮できない。また,使用済燃料に含まれる放射性廃棄物を安全に処理するためにも再処理施設は不可欠なものである。
 このように,使用済燃料の再処理は,核燃料サイクルの“かなめ”であ
 り,原子力を低廉かつ安定したエネルギーの供給源とするためには,是非とも再処理施設の建設が必要である。
 このため,動力炉・核燃料開発事業団は,昭和51年操業開始を目途に再処理施設を茨城県東海村に建設し,諸試験を進めている。しかし,原子力発電所の増加に伴い,使用済燃料の年間発生量は,操業開始後1〜2年のうちにはその処理能力を上まわるものと予想される。
 原子力委員会は,第二再処理工場以降については,民間に期待するとの方針を明示している。これを受けて,昭和49年6月,電力会社により「濃縮・再処理準備会」が設立され,第二再処理工場建設に関する調査検討を始めているが,第二再処理工場の建設計画はいまだ具体化していない。なお,当面国内の再処理能力を上回って生ずる使用済燃料の再処理については,一部の電力会社は海外再処理機関と委託契約を結ぶこととしている。

(1)再処理施設の建設

 動力炉・核燃料開発事業団は,昭和46年6月,茨城県東海村に我が国最初の使用済燃料再処理施設の建設を開始した。この施設は,年間210トンUの処理能力を有し,処理方式として溶媒抽出法による湿式ピューレックス法を採用している。
 現在,主工場,廃棄物処理場,分析所,高レベル廃棄物貯蔵所等の建設工事が完了し,化学薬品を用いた化学試験を進めている。化学試験終了後天然ウラン,劣化ウランを用いたウラン試験,使用済燃料を用いたホット試験,の試験を順次段階的に行って施設の安全性及び性能を十分確認した後,昭和51年に操業開始の予定である。

 我が国の再処理施設建設計画

イ 施設の要目(設計値)

(イ)処理方法        湿式ピューレックス法
(ロ)処理能力        0.7トンU/日
(ハ)処理燃料の仕様
(i)濃縮度 約4%以下
(ii)燃焼度  約28,000MWD/T
(iii)比出力  約35MW/T
(iv)冷却日数 約180日以上
(V)燃料集合体最大寸法 470cm×26cm×26cm
(ニ)製品 精製三酸化ウラン粉末及び精製硝酸プルトニウム溶液

ロ 建設をめぐる動き

 再処理工場の建設に対しては,工事着工後も,施設に関する設計及び工事の方法の認可につき,科学技術庁長官に対して異議申立てを行うなどの動きがある。
 最近においては,昭和49年8月,海中放出管に関する設計及び工事の方法の認可につき,地元村議を含む住民5名から行政不服審査法にもとづく異議申立てが行われた。
 また,動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設への使用済燃料の搬入については,昭和48年にいたり日立港及び国道245号線の利用に対し,地元茨城児及び日立市から強い難色が示されたことに鑑み,昭和49年4月,科学技術庁に「使用済核燃料輸送対策調査連絡会」を設置して,関係者による調査検討を開始した。この調査連絡会における調査検討は現在継続中であるが,これまでの検討の結果,昭和52年度以降は関係先の了解を得た上で日本原子力発電(株)東海第二発電所の付属物掲揚施設を利用して使用済燃料の陸上げを行い,また,この時までに日本原子力発電(株),日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団の敷地を通る道路を整備するという基本方針が策定されている。

(2)再処理技術に関する研究開発

 動力炉・核燃料開発事業団においては,高速増殖炉燃料に対して世界の主流を占める湿式再処理法を適用するための研究に昭和48年度より着手した。
 一方,この方式に比べて,乾式法は工程が短く,液体廃棄物を出さない等の利点を有するものと考えられているので,日本原子力研究所において乾式法,とくにフッ化物揮発法について,模擬燃料を用いたプルトニウムのフッ素化,プルトニウムの分離などの基礎研究が行われた。また,再処理工場から環境へ放出される放射性廃棄物の低減化をめざして動力炉・核燃料開発事業団において,廃液の蒸発処理及びクリプトン除去の研究開発が行われている。

(3)使用済燃料の輸送

 我が国では現在,海外において使用済燃料の再処理を行っている。このため,米国,英国へそれぞれ輸送されている。
 米国のアイダホ工場-JRR-2(日本原子力研究所),京大炉BNFL(英国原子燃料公社)-JMTR,JRR-2(日本原子力研究所)東海炉(日本原子力発電)敦賀炉(   〃   )福島第一原子力発電所1号炉(東京電力)昭和49年度には新たに東京電力(株)の福島第一原子力発電所1号炉の使用済燃料がBNFLへ輸送された。
 使用済燃料の輸送の安全を確保するためには,輸送容器の設計及び輸送の方法について適切な規制が必要である。国際間の輸送については,従来,国際原子力機関(IAEA)の放射性物質安全輸送規則に基づいて規制が行われてきた。国内輸送についても,このIAEAの規則に準じて規制が行われてきた。
 IAEAの同規制が,1973年に大幅に改訂されたのを契機に,放射性物質の安全輸送に関する技術的基準の検討を行うため,昭和49年1月原子力委員会に放射性物質安全輸送専門部会を設置した。
 同部会は昭和49年12月19日に報告書をとりまとめたが,これを受けて原子力委員会は本年1月21日放射性物質の輸送に関する技術的基準について決定を行った。
 一方,動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設が操業を開始する昭和51年度からは,使用済燃料の国内輸送が頻繁に行われることとなるので,これに対応して民間においても使用済燃料の輸送体制の整備が進められている。


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