1 ウラン資源

(1)天然ウランの需給

 原子力発電の進展に伴い,我が国の天然ウランの需要量も著しく増大し,昭和47年6月の原子力委員会の「原子力開発利用長期計画」によれば,昭和60年度(1985年)にはウラン精鉱(U308)にして年間約12,000ショート・トン,累積で約99,000ショート・トンが必要になるものと見込まれている。
 これに対して,現在までに把握された国内のウラン埋蔵量は約10,000ショート・トンであり,今後とも飛躍的な増加は期待できないので,我が国が必要とする天然ウランはほとんど全てを海外に依存しなければならない。
 このため,。我が国の電力会社はカナダ,英国,フランス,オーストラリア等から長期又は短期契約により,現在までのところ約135,000ショート・トンの購入契約を締結しており,価格値上げ等契約改定の動きはあるものの昭和60年度頃までの必要量についてはほぼ確保済であるが,それ以降に必要とされている分についてはほとんど手当されておらず,今後長期にわたり安定して供給を受けられるよう施策を講じていくことが必要である。
 OECDの原子力機関(NEA)及び国際原子力機関(IAEA)が1973年8月に発表した共同報告書によれば,自由世界の1985年までの累積需要量は約90万ショート・トンと推定されており,これに対して自由世界におけるU3081ポンド当り15ドル以下で採掘できるウラン資源の推定及び確認埋蔵量は約400万ショート・トンとされているが,U3081ポンド当り10ドル以下で採掘できる確認埋蔵量は約120万ショート・トン程度に過ぎず,採掘まで・のリードタイムを考慮すると画期的な鉱床の発見がない限り近い将来ウラン資源のひっ迫及び価格の大幅な上昇が予想される。したがって今後とも比較的低コストで採掘可能なウラン資源の開発・確保に努める必要がある。
 また,現在確認されているウラン資源は,米国,カナダ,オーストラリア,南アフリカ等の特定地域に偏在しており,かつ国際大資本の進出やウラン資源国の輸出禁止,資源温存,加工度を高めての輸出等を含む資源保護政策の動きが顕著となっていることなどから,将来における安定供給が懸念されている。
 このため,欧州各国は強力な助成措置のちとに海外における探鉱活動を活発に進めている。

(2)我が国の天然ウラン確保策

 我が国は現在,長期,短期契約により昭和60年度頃までの必要量についではほぼ確保されているといえるが,それ以降必要とされる量についてはまだほとんど手当がなされていない。このため,我が国は原子力委員会に設置された「ウラン資源確保対策懇談会」が昭和46年6月に発表した報告の趣旨に沿って,長期,短期の購入契約を引き続き促進するとともに,長期的には開発輸入の比率を高めることとしている。

 この方針に基づき,国による調査の強化を図るため,動力炉・核燃料開発事業団の予算を増額し,海外情報収集活動や鉱床調査等の基礎的調査を行っており,昭和49年度にはアメリカ,中南米等における鉱業事情調査及びカナダ,オーストラリア,アフリカ等における鉱床調査を行った。
 また,民間企業による探鉱開発に対して助成措置を行うため,金属鉱業事業団の成功払い融資,海外経済協力基金,輸出入銀行等からの融資,債務保証等の措置を講じている。
 現在,我が国のウラン探鉱専業会社は前表に示すとおりであるが,最近,ウラン資源保有国は資源保護政策の強化やウラン資源の付加価値を高める政策を打ち出しているので,我が国としても相手国の実情にあった探鉱活動を進める等これら資源保有国との友好,協力関係をさらに一層深めていく必要があろう。


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