第4章 核燃料サイクルの確立

 石油危機に端を発したエネルギー危機に対処するため,世界的に今後ますます原子力発電の果す役割が増大するものと考えられており,これに伴い,核燃料に刻する需要は急激に増加するものと見込まれている。このため,我が国として,核燃料の安定的供給,有効利用等のための核燃料サイクルの確立はますます重要な政策課題となってきている。
 ウラン資源に乏しい我が国としては,天然ウランの確保は極めて重要な問題であり,長期短期の購入契約等により確保を図るとともに,長期的には開発輸入の比率を高めることを目標に海外における探鉱,開発を進めていく方針である。このため,現在までカナダ,オーストラリア,アフリカ等で調査,探鉱を行っているが,最近とみに資源保有国の資源ナショナリズムが顕著となっているところから,海外における探鉱,開発にあたっては国際協調を基調としつつ進めることが必要となっている。
 ここ当分の間,我が国を含め,世界各国で建設される原子力発電所は低濃縮ウランを燃料とする軽水炉が主流を占めるものと考えられ,これに伴い,濃縮ウランの安定確保を図るため,欧米各国で国際濃縮計画が検討されている。我が国としては,日米原子力協力協定による米国からの供給のほか,供給源の多角化を図るためこれらの国際濃縮計画に参加する可能性について検討を行っている。さらに,濃縮ウランの究極的安定確保を図るため,昭和60年までに我が国において国際競争力のある濃縮工場を稼動させることを目標に遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発を国のプロジェクトとして積極的に推進している。
 また,原子力発電所で使用した核燃料(使用済燃料)の中にはウランから生成されたプルトニウムや燃え残りのウラン等の有用物質が多量に存在しており,これら有用物質を再び動力炉の燃料として利用するため分離抽出し,同時に放射性廃棄物を安全に処理する再処理施設が必要である。現在,我が国において昭和51年に稼動させることを目標に,我が国最初の再処理工場の建設が鋭意進められているが,この施設の能力も今後急増する使用済燃料の排出量に応じきれなくなるものと見込まれており,これに続く第2再処理工場の建設が民間企業によって早期に行われることが期待されている。


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