5 (財)日本分析センターの発足

 放射能調査に関して,科学技術庁は,(財)日本分析化学研究所に対し,原子力軍艦寄港地における海水,海底土及び海産生物の核種分析並びに核実験による放射性降下物の影響の把握のための都道府県衛生研究所等の採取試料の核種分析等を委託してきたが,昭和49年1月,衆議院予算委員会の審議において,昭和47年度の原子力軍艦寄港の際の核種分析に不正の事実のあることが指摘された。
 このため,科学技術庁は,放射能監視対策推進本部を設置するとともに,直ちに部外の専門家の協力を得て大がかりな立入調査を行った。その結果,昭和47年度において原子力軍艦寄港地で採取された試料の機器分析のうち,実際の試料を測定しないで既存の波形図をコピーしていたものが約30パーセント,化学分析について測定を行わないで最終報告書をつくりあげたものが約40パーセントあり,また,昭和48年度の分析データーの一部のほか核実験による放射性降下物の環境試料分析の一部にも不正があることが明らかにれたが,電気事業者から委託されていた一部の原子力発電所周辺などの環境試料には不正な分析がなされたと認められる事実はなかった。
 このため,科学技術庁は,日本分析化学研究所に対する分析委託を中止するとともに,原子力軍艦放射能調査の核種分析については,とりあえず理化学研究所及び放射線医学総合研究所に,都道府県衛生研究所等が採取した環境試料等については理化学研究所及び日本原子力研究所にそれぞれ分析を依頼した。また,原子力軍艦寄港地周辺の放射能調査については,横須賀,佐世保及び沖縄ホワイトビーチにおいて放射能水準を把握する緊急サンプリングを実施し部外の専門家から構成される「放射能分析評価委員会」を設けて分析結果の評価を行う措置を講じた結果,従来の現地の放射能監視及び海上保安庁水路部の分析結果によっても示されているとおり,周辺住民の安全は保証されていることが確認された。
 一方,(財)日本分析化学研究所に対しては,委託費の返還を求めるとともに,昭和49年6月同研究所の設立許可を取り消すなどの厳格な措置をとった。さらに,恒久的分析体制を整備するため,新たに分析専門機関を設立することとし,鋭意準備を進めた結果,昭和49年5月1日(財)日本分析センターが発足し,7月1日から文京区理化学研究所駒込分所内において業務を開始した。なお,同センターは,板橋区に新しい分析施設の建設を進めた結果,11月から新施設で業務を開始した。なお,同センターの設立以来昭和49年度末までに9隻の原子力軍艦が寄港しており最初の1隻を除く8隻については,同センターで分析を実施している。


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