4 低線量放射線の影響研究

 原子力委員会は,低線量放射線の影響研究の重要性に鑑み,環境・安全専門部会に低線量分科会を設け,昭和47年7月から昭和48年6月まで,12回にわたり検討を行った。
 同分科会では,原子力施設から環境に放出される放射性物質に由来する低線量域の放射線が,長期的にみて人間に与える障害の可能性を総合的に推定し,その対策を講じる必要性があることから,研究の効果的進め方について審議を行い,昭和48年7月,報告書を提出した。
 また,放射線医学総合研究所及び国立遺伝学研究所において,昭和48年度から本調査研究の一部に着手しており,昭和49年度からは新たに農業技術研究所放射線育種場においても開始した。
 放射線医学総合研究所では低線量及び低線量率被ばくの人間に対する放射線障害の危険度を推定するうえに重要な晩発性の身体的影響及び遺伝的影響並びに被ばく形式の特異性からみて,とくに内部被ばくの障害評価の3つの研究分野に着目して長期的研究を実施することとし,昭和48年度は,まず「晩発障害の危険度の推定に関する調査研究」を開始するとともに,「遺伝障害の危険度の推定に関する調査研究」,「内部被ばくの障害評価に関する調査研究」についても予備的調査研究を実施した。
 国立遺伝学研究所では,遺伝子の損傷と再生,体内にとりこまれた放射性同位元素による誘発突然変異及び変異体検出の効率化をはかる研究等の基礎的研究を推進することとしている。
 農業技術研究所放射線育種場においては,高等植物における突然変異及び染色体の感受性に関する研究を推進することとしている。また,原子力平和利用研究委託費により,放射線発がんの誘発機構の解明及び放射線障害の検出技術の確立に関する研究を民間に委託して昭和48年度から実施している。


目次へ          第2章 第5節へ