2 環境放射能調査
(3)温排水に関する調査研究

 温排水問題は,原子力発電所に限らず,火力発電所においても,共通の課題となっている。温排水の放出は人の健康の悪化や生活環境の悪化を招く物質の蓄積をもたらすものでばないが,環境への影響については,必ずしも十分解明されているとはいえない現状にある。
 環境庁においては,水質汚濁防止法に基づく温排水の排水基準を策定するため,特定地域を選定して調査研究を進めている。また,通商産業省においては,拡散予測,水理実験等による調査研究を民間に委託して行っているほか環境審査顧問会を設置し(昭和48年10月),発電施設の設置に先立つて環境への影響を評価検討している。原子力発電所から放出される温排水中に含まれる極微量の放射能の海洋生物への濃縮及び温排水の漁業への利用等について総合的に研究するため,放射能調査対策研究の一環として「原子力施設排水の海洋資源への影響に関する調査研究」を昭和46年度より5カ年計画で進めることとし,(財)温水養魚開発協会に委託して,調査研究を実施している。昭和48年度は,日本原子力発電(株)東海発電所から温排水を取水して,チダイ,アワビ,クルマエビ等の飼育試験を実施し,放射性核種の濃度等を調査したが,いずれも,検出限界以下であった。
 また,昭和49年度からは,従来の試験を継続するとともに,抱卵期の飼育試験を行った。
 なお,昭和49年度より都道府県に対して,電源開発促進対策特別会計により温排水影響調査交付金が交付されることとなり,発電所周辺における温排水の影響調査を実施することとなったほか,昭和50年度からは,さらに温排水の有効利用の調査研究が委託される予定である。


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