第2章 環境保全

 我が国においては,原子力開発利用の当初から安全性の確保に万全を期すとともに,放射性物質の環境への放出については,国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいて策定された我が国の放射線防護基準を下回ることはもちろん,実用可能なかぎりこれを低減させるよう努力してきた。
 原子力委員会は,環境保全及び安全確保に対する要請に応える立場から,昭和47年2月環境・安全専門部会を設置し,その中に総合,安全研究,環境放射能,低線量,放射性固体廃棄物,温排水についてそれぞれ分科会を設け,その基本的考え方,研究開発の進め方について鋭意審議を進めた結果,昭和48年7月,総合及び環境放射能分科会を除く他の分科会から報告書が提出された。さらにこれら2つの分科会についても,昭和49年10月,報告書が提出された。
 この報告書において「as low as practicableの原則のとり入れ方」が指摘されており,検討の結果,原子力委員会は,本年5月13日発電用軽水炉施設からの放射性物質の放出に伴う周辺の公衆の被ばく線量を低く保つための指針を定めた。
 また,原子力施設周辺の放射線監視の結果を公正に評価する中央評価機構の必要性が指摘されており,このため原子力委員会は「環境放射線モニタリング中央評価専門部会」を昭和49年12月に設置した。
 一方,昭和49年1月科学技術庁が,(財)日本分析化学研究所に委託していた放射能調査の分析のうち,一部に不正があることが明らかになった。このため,分析の委託の中止,関係機関への分析の依頼,原子力軍艦寄港地での緊急サンプリング等を行った結果,周辺住民の健康と安全は確保されていることが確認された。また,将来における我が国の分析の中枢機関として,昭和49年5月1日(財)日本分析センターが設立され,業務を開始したことにより分析体制は整った。


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