3. 工業利用

 放射線の工業利用は化学工業,紙パルプ工業,鉄鋼業,機械,電気工業,造船業等広汎な分野におよんでおり,利用技術もゲージング利用,トレーサー利用,非破壊検査,放射化分析等多岐にわたっており,その利用件数の増加も著しい。
 ゲージング利用については,産業界における省力化,自動化のすう勢によって,工程管理のためのアイソトープ利用技術の利用が進み,特に電子計算機の使用と結びついた放射線利用ゲージングが着実に普及してきている。
 ラジオアイソトープを線源とする非破壊検査法は,造船業を中心として普及しており,非破壊検査専業会社の数の多い点でわが国は世界一である。
 トレーサー利用については,従来の工程解析に広く利用されるほか,基幹化学工業ともいうべき食塩電解工業におけるラジオアイソトープ希釈法による電解槽内水銀の計量技術の普及が進められ,これに使用する197Hgの供給体制も確立された。
 最近の著しい傾向として,産業をとりまく環境調査関係を中心とした分析への放射線利用がにわかに活発になってきており,各地の公害監視センター等にラジオガスクロマトグラフが設置され,石油,電力業界にイオウ分析計等が設置されている。この放射線イオウ分析計についてはJIS日本工業規格)化の検討が具体的に進められた。また日本原子力研究所等において,大気,水質汚染調査技術の開発が進められ,その成果が認められてきている。
 その他国立試験研究機関においても,それぞれの特性を生かした試験研究が広く進められている。


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