第9章 放射線利用
1. 概要

 放射性同位元素(ラジオアイソトープ)や各種放射線発生装置を利用する事業所は,医療,農業,工業等の各分野において逐年増加し,昭和47年度末現在では総数2,872にのぼっており,昭和46年末の2,556に比べて13%増加している。
 このような放射線利用における実用化の進展とともに各分野での研究開発も積極的に推進されている。
 一方,放射線利用の進展に伴い,ラジオアイソトープの需要も毎年増加してきており,そのための供給については日本原子力研究所を中心として需要の多い核種に重点を置き,その量産化を進めるとともに,海外に依存することの困難な短寿命核種についても開発を進めている。
 使用済燃料から回収されるラジオアイソトープの利用に関する研究については,日本原子力研究所で,90Sr,137Csを各種線源として使用するための加工技術の研究が進められている。
 昭和47年度におけるラジオアイソトープの供給状況は第9-1表,第9-2表に示すとおりである。
 また科学技術庁は1980年を中心とし,2000年までのラジオアイソトープおよび放射線利用に関する技術予測を実施し,今後の諸問題についての見とおしを示した。
 この技術予測の調査結果は,昭和47年10月にまとめられたが,これによると原子炉を利用したラジオアイソトープの製造,放射線照射した複合材料の普及,汚水の放射線浄化法の開発などほとんどの分野において1980年頃に実用化すると予測されているが,放射線障害防止,廃棄物処理の分野では新技術の開発を必要とする課題が多いために実現が遅れると予測されているものもある。


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