2, ウラン資源の確保

(1)需給状況

 原子力発電の進展に伴い,わが国の天然ウランの需要量は,昭和50年度には年間4,000ショートトン(U3 08以下同じ),累積16,000でショートトン,昭和60年度には年間12,000ショートトン,累積で約100,000ショートトンと急増する見込みであるが,ウラン資源に乏しいわが国はその供給のすべてを海外に依存せざるを得ない状況にある。
 わが国の電力会社が長期,短期の購入契約により確保した天然ウランの量は,現在約9万ショートトンであり,昭和60年(1985年)頃までの所要量の大部分を手当てずみであるが,世界的な需給状況からみて問題はむしろ昭和60年頃以降にあるものと考えられる。IAEA/NEAの共同作業部会の報告(1973年5月)によれば,自由世界の天然ウランの需要量は,昭和50年(1975年)には年間約3万ショートトン,累積で約8万ショートトン,昭和60年には,年間約15万ショートトン,累積で約90万ショートトンに達するものと見込まれている。これに対し現在確認されている埋蔵鉱量は約115万ショートトン(U3 O8換算)であり,さらに安定した鉱山操業には通常10年分程度の埋蔵鉱量が必要であることを考えると,現在の供給過剰基調は1980年代には供給逼迫基調へと変化してゆくものと見られている。

(2)海外諸国の動向

イ ウラン消費国

 西ドイツは,わが国と同様みるべき国内資源に恵まれず,原子力発電の進展に伴い海外ウラン資源の開発を積極的にすすめてきている。すなわち1967年および1968年に相次いで設立された2つの民間コンソーシアム(うち1社は政府が資本参加)がカナダ,オーストラリア,アフリカ諸国において成功払い融資制度を活用し,積極的に探鉱開発をすすめている。
 この結果,ニジエールのSOMAIR社(ニジエール政府,フランス,イタリアおよび西独の共同出資),南西アフリカのR0SSING社,カナダのURANERZ,CANADA社(西独,米国系現地資本の共同出資)等へそれぞれ資本参加し,鉱山開発をすすめている。
 フランスは,国内にある程度の資源を有しているものの,やはり早くから海外の地域において探鉱をすすめているが,とくにアフリカ諸国においてはすでに相当の成果をあげており,さらにカナダ,オーストラリア等においても活発な探鉱を行なっている。その結果,相当量の埋蔵量および生産量を確保しており,統一的販売会社であるURANEX社を通じ各国へのウラン精鉱の販売に力を入れている。
 米国は,国内にかなりの埋蔵鉱量を有しており,国内鉱山の保護のため1960年代より国内用に供するウラン精鉱の輸入を禁止してきたくらいである。従来,探鉱活動等はかならずしも活発ではなかったが,エネルギー需要の増大と石油資源の入手困難から原子力発電の重要性は一層高まるものとみられ,国内における探鉱活動も近くふたたび活発になるものと考えられる。一方,海外資源開発活動もまた活発化し,1970年代後半にはウラン精鉱の輸入禁止も解かれるものと予想されている。
 このように各国ともウラン資源の確保について積極的な活動を続けており,今後における資源獲得競争は,一段と熾烈なものになると見られる。

ロ 資源保有国

 豊富なウラン資源に恵まれ,自国の用に供してもなお輸出に振り向ける余力のある国として,カナダ,オーストラリア,南アフリカ共和国およびその他のアフリカ諸国等がある。なかでも,オーストラリアはここ数年脚光をあびており,各国の進出がいちじるしく,相次いで大鉱床の発見が報ぜられている。しかしなから,かかる資源保有国では同時に国益擁護に対する関心も高まってきており,輸出品の付加価値の増大,開発利益の還元等を図る政策が取られ始め,さらに生産者による価格協定の動きも伝えられており,これからの開発輸入が資源国との共栄を無視してはあり得ないことを示唆している。

(3)わが国のウラン資源確保策

 わが国のウラン資源確保策としては,当面は長,短期の購入契約により所要のウラン資源を確保せざるを得ないが,安定供給の観点から長期的には少なくとも所要量の1/3程度を開発輸入により確保することが望ましい。このため基礎的調査を海外諸国において行なうほか,民間企業に対し助成措置を講ずることとしている。
 動力炉・核燃料開発事業団は,国家資金によりカナダ(ブリティッシュ・コロンビア州,北西準州)およびオーストラリア(西オーストラリア州,南オーストラリア州)で鉱床調査を,さらに南アフリカ,南米,中近東で鉱業事業調査を引き続き実施し,有望地域については,探査権の設定により権利を確保しつつ有望性の確認を急いでいる。
 一方,民間企業における従来の探鉱活動は必ずしも十分な成果を挙げてきていなかったが,鉱山業界,電力業界等により共同で設立された海外ウラン資源開発(株)が,フランス原子力庁およびニジェール共和国政府とともにニジェール国アクータ地区で約3年にわたり探鉱を進めてきた結果,約2,000ショートトン(U3 08換算)1年の規模で15年以上探鉱可能であるという見通しが得られており,現在,採鉱,製錬方式,鉱山運営等について検討中で,今年中には結論が得られることとなっている。
 さらに本年2月および3月には,それぞれ大平ウラン探鉱(株)および豪州ウラン探鉱(株)が相次いで設立され,金属鉱物探鉱促進事業団の成功払い融資制度(①融資比率最高70%以内,②金利6.5%以内,③8年据置,18年以内償還,④不成功の時返還免除)を活用してオーストラリアで探鉱を開始することが計画されており,今後の成果が注目される。
 しかし,将来のウラン需要の1/3を開発輸入によって確保するとの方針からは,さらに一層の努力が必要であろう。


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