2. 放射性廃棄物の処理処分

(1)放射性廃棄物処理処分の概要と現状

 わが国では,「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」によって,放射性同位元素等使用事業所(RI使用事業所)を,「核原料物質,核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」によって,核燃料の加工,使用済燃料の再処理等の事業所および原子炉をそれぞれ対象として,それらの施設で発生する放射性廃棄物に対する規制を実施している。
 RI使用事業所等で発生する液体状および固体状の放射性廃棄物のうち,各事業所で処理処分することが困難なものについては,一時,各事業所の保管設備に保管した後,日本アイソトープ協会に引渡されている。日本アイソ卜ープ協会では,容器に密封されたこれら廃棄物を専用のトラックで全国4ケ所(関東,関西,九州,東北)の貯蔵所に種類別に分類保管したうえ,最終的には日本原子力研究所東海研究所に集荷している。ここでは,これらの廃棄物について処理を施し,半地下構造式のコンクリートピットに保管廃棄している。
 原子力発電所等の原子力施設で発生する放射性廃棄物は,その種類および発生量ならびにその管理方式が炉型によってそれぞれ異なるが,放射性物質を吸着した使用済イオン交換樹脂など比較的放射能レベルの高い廃棄物は脱水後一時的に貯蔵タンクに貯留される。
 このほか,極低レベルの液体状および気体状の廃棄物は,法令に定められた基準値を十分下まわるよう適切な処理をほどこしたのち,環境に放出される。また,イオン交換樹脂の再生廃液を蒸発濃縮したもの,フィルクスラッジおよび雑固体等放射能レベルの低い廃棄物は,ドラム缶にセメント固化されている。

(2)環境安全専門部会放射性固体廃棄物分科会

 昭和47年6月に改訂された原子力開発利用長期計画においては,放射性廃棄物の処理処分について「低レベルの固体廃棄物については陸地処分,海洋処分を組合わせて実施する方針でのぞむものとする。前者については,50年代初め頃までにその見通しを明確にするものとし,後者については,試験的海洋処分を経て,50年代初め頃までにその見通しを得ることとする」「中程度のレベルの放射性廃棄物については,昭和50年代半ば頃までにその処分方針を決定するものとし,それまでは当該施設内に保管するものとする。」「使用済燃料再処理施設等で発生する高いレベルの放射性廃棄物については,当面慎重な配慮のもとに保管しておくものとする。」等の基本的な方針を明らかにしている。
 これをうけて,長期計画に示されている計画を円滑に実施にうつす具体的な方策を検討するため,昭和47年6月原子力委員会の環境安全専門部会の中に,放射性固体廃棄物分科会が設置された。同分科会は,低レベル固体廃棄物の処分実施計画およびそれに必要な調査研究,中レベルおよび高レベル廃棄物の処理処分の技術開発課題,処分実施体制のあり方,研究開発推進体制のあり方,国際協力のすすめ方等,廃棄物の処理処分に関する全般的事項にわたって検討を行なってきたが,近く具体的な方策が明らかにされる予定である。

(3)放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発

 放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発としては,昭和47年度は前年度に引き続き,日本原子力研究所で被処分体に関する研究を,動力炉・核燃料開発事業団でアスファルト固化に関する研究,また関係の国立試験研究機関において新固型化材料に関する研究をそれぞれ実施したほか,原子力平和利用研究委託費により,放射性廃棄物の地中処分にともなう放射性核種の挙動に関する試験研究が行なわれた。
 また,昭和47年度から新たに放射性廃棄物の処理処分に関する基準作成に必要な処分環境調査としての海洋調査および陸地処分地点調査が開始されたが,昭和48年度からは,さらに海洋科学技術センターにおいて試験的海洋処分を実施するうえで必要な被処分体の深海モニタリング技術の開発に着手することとしている。


目次へ          第4章 第3節へ