5. 世界の原子力発電

 1972年(昭和47年)末現在,世界全体では,第2-3表に示すとおり124基,合計電気出力3,538万kWもの原子力発電所が稼動中である。これを国別にみると,米国が1,473万550kWで全体の41.6%を占め,次いで英国の543万kW(15.4%),フランスの270万kw(7.6%),ソ連の247万5千kW(6.7%)と並び,西独,カナダ,日本等がこれらに続いている。1972年末現在で建設中および計画中の発電炉を加えると原子力発電設備容量の総計は,2億4,372万KWにも達し,前年末に比べて稼動中のもので33.6%,建設,計画中のもので24.3%増加している。このように原子力発電は,世界的に着実な進展を示しており,とくに米国の原子炉メーカーの受注量は,米国内向けだけでも約4,700万kWと前年度の約2倍に増加している。しかし,米国では従来に比べて原子力発電所の建設期間が幾分伸びる傾向にある。
 発電設備を炉型別にみると,軽水炉が運転中のもので,2,226万kWと全体の62.9%を占め,建設,計画中については1億8,112万kWとその大半を占めている。さらに軽水炉の内訳をみると加圧水型炉(PWR)と沸騰水型炉(BWR)は運転中のものについてはほぼ同数であるが,建設,計画中のものでは,PWRが1億1,388万kWで全体の55.8%を占め,BWR(6,724万kW,全体の33.1%)を大きくひきはなしている。一方,ガス冷却炉については運転中が854万kW(24.1%),建設,計画中が1,221万Kw(6.0%)となっている。このガス冷却炉の中では高温ガス炉(HTGR)の抬頭がいちじるしく,現在約600万kWが建設,計画中である。

 米国では,環境保護問題,ECCS問題等から原子炉安全審査の期間が伸び,許認可が遅延していたが,エネルギー供給の安定化等の観点から許認可の手続きを早めるよう原子力委員会規制総局の再編成などの措置がとられている。
 英国の原子力発電は,現在,改良型ガス冷却炉を中心として進められているが,将来の炉型選択については検討中であり,まだ結論は出されていない。しかし,将来の原子力機器供給産業の強化のため,GEC(英国ゼネラルエレクトリック社)が中心となって設計建設会社の1本化を図っている。
 ソ連では,チャネル型と呼ばれる独自の黒鉛減速軽水冷却炉と加圧水型炉による原子力発電所の運転や建設を進める一方,高速増殖炉の研究開発では世界に先がけて1972年11月に高速実証炉BN-350を臨界に至らせ,またBN-600を建設中である。
 ソ連では,他のエネルギー資源が豊富なせいもあって,今後の原子力発電所の設置はウラル地方以西が中心となるようで,第9次5カ年計画が終了する1975年には800万kw,さらに1980年までには3,000万kW程度の設備容量が見込まれている。
 また,カナダでは重水炉の開発を進めており,重水減速重水冷却型(CANDU-PHW)から重水減速沸騰軽水冷却型炉(CANDU-BLW)へと発展させ輸出にも力を入れている。


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