3. 原子力発電所の建設

(1)原子力発電所の運転,建設状況

 昭和48年7月1日現在,わが国で稼動している商業用発電炉は5基5 総電気出力182万3千kWである。このうち,昭和47年度に新たに営業運転を開始したものは,関西電力(株)の美浜発電所2号炉の1基だけで,昭和47年7月に運転を開始した。昭和47年度における商業用発電炉の運転実績を第2-1表に示す。
 昭和48年7月現在,建設中の商業用発電炉は17基,総電気出力1,365万3千Kw((第2-2表),(第2-2図参照))で,これに運転中の5基を加えると合計の電気出力は1,547万6千kWに達している。
 日本原子力発電(株)東海発電所は,わが国初の原子力発電所で,昭和41年7月から営業運転を行なっている。また同社の敦賀発電所は昭和45年から営業運転に入っているが,昭和48年3月には軽水炉ではわが国はじめての使用済燃料を英国のウィンズケール再処理工場へ輸送した。同社の東海第2発電所は,昭和48年3月にその設置が許可された。
 東京電力(株)では,福島県双葉郡双葉町および大熊町に福島原子力発電所の建設を進めているが,同発電所1号炉が現在稼動中であり,2号炉も本年中には運転を開始すべく建設が進められている。このほか,3号,4号,5号,6号炉の4基を建設中である。同発電所6号炉は,昭和47年12月原子炉の設置が許可され,着工したばかりであるが,これらの6基がすべて完成すれば1発電所で469万6千kWの発電設備容量をもつことになる。
 関西電力(株)では,美浜発電所1号炉が昭和45年11月から営業運転を行なっていたが,昭和47年6月,蒸気発生器細管の熱腐食による漏洩事故が発生し,同細管の検査のため約6カ月にわたり原子炉は停止された。このため1号炉の設備利用率は36.7%と前年度の72.4%に比し大幅に減少し,2号炉における変圧器事故とも重なって,夏期ピーク時の電力供給に大きな不安を与えた。美浜発電所2号炉は昭和47年4月臨界に達し,同年7月から営業運転を開始した。このほか関西電力(株)は若狭湾沿岸に美浜3号,高浜1号,2号,大飯1号,2号の5基の発電用原子炉を建設している。
 中国電力(株)では,島根県八束郡鹿島町に島根原子力発電所の建設を進めており,本年3月末の工事の総合進捗率は98.5%とほとんどの工事を終了し,4月には初装荷燃料の装荷を行ない,11月には営業運転を開始する予定である。

 中部電力(株)では,昭和49年11月の運転開始を目途に浜岡原子力発電所1号炉を建設中であり,2号炉については,本年6月,内閣総理大臣より設置が許可された。2号炉の設置許可にあたっては,わが国でははじめで環境調査報告書が提出された。
 九州電力(株)では,昭和50年7月の運転開始をめざして玄海発電所を建設中である。
 東北電力(株)では,昭和45年11月に女川原子力発電所の設置が許可され,現在,漁業補償等の交渉が行なわれているが,着工が予定よりかなり遅れ運転開始予定は昭和50年12月から52年3月に延期された。
 四国電力(株)では,昭和47年12月,伊方原子力発電所の設置が許可され,現在準備工事を行なっている。同発電所の用水については,タービン抽気を熱源にして,多段フラッシュ法により海水淡水化を行なうことになっている。

(2)原子力発電所の建設計画

 東京電力(株)が,福島県双葉郡富岡町,楢葉町に福島第二原子力発電所1号炉の建設を計画しており,現在その設置許可を申請中である。
 さらに,北陸電力(株)が石川県羽咋郡志賀町に,北海道電力(株)が北海道岩内郡共和町に原子力発電所を設置することについて検討を行なっている。
 このほか,各電気事業者は将来における電力供給を確保するために,さらにいくつかの原子力発電所の建設について積極的な検討を進めており,今後の新規電源開発の中心は火力から原子力へと次第に移行していくものと考えられている。


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