第12章国際協力
1. 概要

 わが国の原子力開発利用を進めるにあたっては,天然ウラン,濃縮ウランなどの核燃料物質を海外から人手するとともに,海外の原子力に関する研究開発の成果を取り入れることが必要であり,このためには,核燃料物質供給国,原子力技術先進国等との協力が不可欠である。また,効率的な研究開発を進めるため,あるいは,保障措置の実施,原子炉の安全性の確保,放射性廃棄物の処理処分等各国共通の課題を国際的に協力して解決していくため,情報の交換,専門家の交流,共同研究の実施などを国際機関を通じであるいは諸外国との多面的な協力を有効により進めていく必要がある。一方,近年,わが国の原子力に関する技術水準の向上に伴い,わが国自身も応分の責任を負う双務的な協力関係が強く望まれるようになり,また,開発途上国に対する原子力分野における技術協力が国際的な責務としてわが国に課せられるようになってきた。
 このような状況のもとに昭和47年度における原子力開発利用に関する国際協力は,核燃料物質および原子力技術の入手のための協力ならびに開発途上国に対する援助協力を中心に米国,英国等との二国間協力により,また国際原子力機関(IAEA)およびOECD原子力機関(NEA)を通じての多国間協力によって積極的に進められた。
 核燃料物質の入手のための協力については,1974年以降5年程度の間に着工が予想される発電用原子炉の燃料として使用される濃縮ウランを入手することができるように,日米原子力協定を改訂する議定書の署名を行なった。
 また,将来の核燃料物質の入手先を多角化するため,ウラン濃縮技術を有する米国およびフランスそれぞれとの間でウラン濃縮に関する国際共同事業の可能性の検討を行なった。
 原子力技術に関する協力については,昭和48年3月に第4回日米原子力会議および第3回日英原子力会議が開催され,それぞれ両国が関心を有する核燃料技術の開発,原子炉の開発,安全性の研究等に関する研究について卒直な意見の交換がなされ今後の一層の相互協力を約した。
 また,昭和48年2月スウェーデンとの間において原子力開発利用に関する情報交換,専門家の交流等を促進することを目的として,書簡交換を行なった。
 その他,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団等は,高速炉,重水炉,材料照射,放射線化学等の分野について,米国,英国,フランス,カナダ等との間で,情報交換,専門家の交流等の相互的な研究協力を進めた。
 わが国は,また,IAEAおよびOECD-NEAによる原子力開発利用に関するシンポジウム,パネルなどの国際会議にも積極的に参加した。
 開発途上国に対する技術協力については,IAEAを通じて研修生を受け入れ,またIAEAによる開発途上国における原子力発電所の市場調査にわが国からも専門家を派遣した。


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