第11章 原子力産業
1. 概要

 わが国の原子力産業は,原子力開発利用の実用化の進展に伴い今ようやく本格的な発展期を迎えようとしている。
 原子力技術は原子力工学,機械工学,電気工学,化学工学,金属工学,土木建築学等きわめて幅広い分野にわたる技術の総合組合せによって成立っている。したがって,原子力産業は在来の産業の多くの分野と密接な関連を有しており,一部専業企業を除いて,在来の企業が原子力部門を設けて原子力機関の事業にあたっているのが現状である。
 先進国にくらべて10年以上も遅れて原子力開発に着手したわが国では,原子力先進国との関係が深く,三菱が米国のウェスチング・ハウス(WH)社,日立,東芝が米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社と軽水炉技術についてそれぞれ提携するなど,現在原子炉機器,核燃料等について主として技術導入によって製作を行なっているが,外国技術の吸収や自主技術開発によって,生産活動は順調に進んでいる。
 今後は,新型動力炉等の分野において,自主技術の開発を積極的に行ない,わが国独自の技術を確立する必要がある。
 わが国の原子力開発利用は,原子力発電所をはじめとして急速に実用化が進展しているが,これをさらに推進するためには,原子力機器,核燃料等の低廉かつ安定した供給が不可欠である。
 とくに,機器供給面において,わが国の企業が今後世界の企業として存続するためには,機器の製作据え付けのみでなく積極的な研究開発を通じ,計画,設計,監理等のいわゆるソフトウェアを強化することが重要となっている。
 また,原子力発電所の進展に伴い,核燃料の需要が急増するが,これに対して,安定,低廉な核燃料の供給を図ることが重要となっている。


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