5. 低線量放射線の影響研究

 原子力委員会は,本調査研究の重要性にかんがみ,環境安全専門部会低線量分科会において「低レベル放射線の人体等に与える影響に関する研究の進め方」について検討を行なっており,その検討結果に基づき本調査研究を総合的,計画的に強力に推進することとしている。
 また,本調査研究では関連する分野が広く,長期の研究が必要であるため,これまでの基礎研究等の成果を基礎とし昭和48年度から放射線医学総合研究所,国立遺伝学研究所等において本調査研究の一部に着手している。
 放射線医学総合研究所では低線量および低線量率被ばくの人々に対する放射線障害の危険度を推定するうえに重要な晩発性の身体的影響および遺伝的影響ならびに被ばくの形式の特異性からみて,とくに内部被ばくの障害評価の三つの研究分野に着目して長期的研究を実施することとし,昭和48年度においてはまず「放射線による晩発障害の危険度の推定に関する調査研究」を開始するとともに,この調査研究の実施に必要な晩発障害実験棟を2ヶ年計画で建設することとしている。
 また,「放射線による遺伝障害の危険度の推定に関する調査研究」および「内部被ばくの障害評価に関する調査研究」についても予備的な調査研究を実施することとしている。
 国立遺伝学研究所では,本調査研究のうち,遺伝子の損傷と再生,体内にとりこまれた放射性同位元素による誘発突然変異および変異体検出の効率化をはかる研究等の基礎的研究を推進することとしている。なお48年度はRI実験棟を建設する計画である。
 また,昭和48年度原子力平和利用研究委託費により,原子力安全研究協会が放射線発がんの誘発機構の解明および放射線障害の検出技術の確立に関する研究を推進することとしている。


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