第9章 放射線利用

§6 海外における放射線利用の動向

 各国に共通して進展がいちじるしく,需要も増加してきているのは医学利用の分野である。放射性医薬品の多様化,サイクロトロン製造核種の普及あるいは医療用放射線機器の進歩に加えて,診断,治療技術についての研究がめざましい進歩をとげている。一方9放射性医薬品の頒布が広く世界的規模で行なわれるようになり,その利用は先進諸国から後進各国へも拡がりつつある。
 環境汚染問題に関しては,放射化分析法,螢光エックス線分析法等によるいわゆる公害試料の分析研究が積極的にすすめられており,とくに半導体検出器を用いる分解能の高いエックス・ガンマ線スペクトロメトリーの著しい発展が技術的な裏付けとなっている。
 放射線の照射利用は,従来からもつとも期待されてきている分野であるが,放射線キュアリング,ウッド・プラスチックあるいはコンクリート・ポリマー等その工業化9企業化に際しての経済性,安全性等が問題になってきている。
 一方,注射筒,針,縫合糸など使いすての医療用具のガンマ線照射殺菌はすでに各国において企業化が進められている。
 核分裂生成物の有効利用については,90Sr,137Cs等の熱源あるいは線源のための固形化技術の開発が進められ,それらの大量利用の研究に強い関心が払われている。アイソトープ熱源,発電器の利用面にも出力の大きいものが目立ってきており,これに伴って,安全性,経済性の検討もさかんである。また238Puのエネルギー源としての有効性に着目し,その精製技術の進歩とともに,心臓ペースメーカーとしての開発はとくに著しく,すでにフランスをはじめとする各国で実用の段階に至っている。これに関連して法的取扱いの問題も検討されてきた。
 米国では,252Cfの生産が進み,放射化分析,非破壊検査等に利用する簡単,有力な中性子源としての利用が強く期待されている。


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