第7章 動力炉開発
§2 高速増殖炉の開発

1 概要

 高速増殖炉は軽水炉や新型転換炉と異なり,主として高速中性子による核分裂反応を利用する原子炉で,消費された以上の核燃料を生成する画期的なものであり,この炉によってウランの持つエネルギーを在来炉に比べてはるかに効率よく利用することができる。このため,高速増殖炉は核燃料の有効利用をはたし,濃縮ウラン需要量を軽減する理想的な動力炉であり,将来の原子力発電の主流になると考えられている。
 世界の原子力先進諸国においては,このような認識のもとに,ナトリウム冷却型高速増殖炉の開発を国のプロジェクトとして強力におし進めている。なかでも,ソ連は発電および海水淡水化の二重目的高速増殖炉BN-350(電気出力換算で350千kw)が1972年(昭和47年)1月完成し,それに続くBN-600(電気出力600千kw)を建設中である。英国のPFR(電気出力250千kw)およびフランスのPHENIX(電気出力250千kw)は,それぞれ昭和47年および昭和48年の臨界を目途に建設中である。米国は昭和55年運転開始を目標に実証炉(電気出力300〜500千kw)の建設計画をすすめており,また西独は,オランダおよびベルギーと共同で原型炉SNR-300(電気出力300千kw)の建設を昭和52年臨界を目途に建設計画をすすめている。
 このような情勢のもとに,動力炉・核燃料開発事業団は,先に述べた基本方針および基本計画にもとづき,プルトニウムとウランの混合酸化物系燃料を用いるナトリウム冷却型高速増殖炉の開発を鋭意すすめているが,現在のスケジュールによれば,実験炉については,初期熱出力50千kw(目標熱出力100千kw)のものを昭和49年に,原型炉については,電気出力300千kw程度のものを昭和53年頃に完成し臨界に至らせることになっている。このための開発計画の概要を(第7-1図)に示す。


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