第6章 環境保全
§3 環境放射能対策

1 放射能対策本部の活動

 政府は,昭和36年10月,核実験にともなう放射性降下物の漸増に対処するため,内閣に放射能対策本部を設置し,放射線の人体に対する影響に関する研究の強化,放射能測定分析法の充実,放射能に対応する報道,勧告,指導,その他放射能対策に係わる諸問題について,関係機関相互の連絡,調整を緊密に行なってきた。また昭和41年12月9中国の第5回核爆発実験に際しては,石川県輪島において,わが国ではこれまでの最高の観測値を記録したことにかんがみ,放射能対策本部は,昭和42年6月,放射性降下物に対する緊急時対策および放射能調査体制の強化について方針を決定した。
 この方針にもとづき,原子力局では,環境放射能水準を全国的に把握するため,空間線量測定用モニタリングポストを16ケ所(昭和46年度は福島,茨城の両県にそれぞれ1か所配備)に,また核爆発実験後,早期に牛乳等をとおして体内被ばくを与えると考えられる131Iの迅速測定を行うため,波高分析器を10か所(昭和46年度は福島,茨城の両県にそれぞれ1か所配備)に配備するなど,放射能調査体制の強化をはかつた。
 放射能対策本部は,昭和46年6月1日フランス政府より南太平洋ムルロア環礁において核爆発実験を行なうとの通告に接し,6月5日幹事会を開催して協議した結果,従来の経緯からみて,平常時の監視体制により核実験の結果の推移を見守ることとした。なお,フランスは,同環礁において6月5日から8月14日の間に5回核爆発実験を実施したが,わが国への影響はみられなかった。
 昭和46年10月28日,米国政府よりアリューシャン列島アムチトカ島において,地下核爆発実験を行なうとの通告があり,11月2日に幹事会を開催して協議した結果,地下核実験であるため,平時の監視体制により当該実験の結果の推移を見守ることとした。同島においては,11月7日こ地下核爆発実験が実施されたが,現在までわが国への影響は見られていない。
 中国が同国西部ロプノール湖付近において,昭和46年11月18日第12回,昭和47年1月7日第13回および昭和47年3月18日第14回核爆発実験を実施したのにともない,それぞれ,放射能対策本部幹事会を開催して協議し,核実験時における調査体制をとり,調査体制の強化をはかつた。これらの調査結果では,第12回実験時には,西日本に降った雨水,落下じん中に,第13回実験時には,中部上空の高空浮遊じんと関東および東北地方に降った雨水,落下じん中に,第14回実験時には,北部上空の高空浮遊じん中にそれぞれ平常値に比べ高い放射能を検出した。


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