第5章 安全性の確保
§2 原子力施設の安全対策

1 原子炉の設置,運転に伴う安全対策

(1) 原子炉の設置許可
 昭和46年度に新たに設置が許可された原子炉は,東京電力(株)福島原子力発電所4,5号炉および関西電力(株)美浜発電所3号炉の計3基であり,昭和46年度末までに許可された原子炉の総基数は臨界実験装置を含め42基となった。このうち,昭和46年度末現在で運転中の原子炉は23基,建設中の原子炉は16基である。
 原子炉設置の年度別の許可状況は(第5-1表)に示す通りである。

 設置変更の許可件数も多数あり,昭和46年度では,動力炉・核燃料開発事業団の新型転換炉原型炉の設置変更が行なわれた。これは,燃料をプルトニウム富化天然ウランに,一次冷却系ループ数4を2に変更するものである。この他,発電炉については,BWR型炉では気体廃棄物処理系に活性炭式希ガスホールドアップ装置の追加設置,PWR型炉では廃液処理系の増強等の変更が行なわれた。
 なお,わが国における原子炉の設置状況は付録IV-1に示すとおりである。
 また,原子炉の設置および変更にともなう設計および工事の方法の認可,それにともなう使用前検査等が,関係省庁において行なわれ,設置にともなう安全対策に関する国の所要措置がとられた。

(2) 原子炉の安全審査
 原子炉の設置または設置変更について許可を行なう場合,内閣総理大臣の諮問により,原子力委員会において厳重な審査が行なわれている。
 このうち,とくに安全性にかかわる事項については,原子炉安全専門審査会において専門的な調査審議が行なわれる。
 46年度には11回の原子炉安全専門審査会が開催され,18件の原子炉の設置または変更について安全審査が行なわれた。とくに,炉の設置および重要な変更の審査にあたっては部会を設置し,厳重なる審査を行なった。これらの概要は付録IV-2に示すとおりである。
 このなかで,関西電力(株)大飯発電所1,2号炉については,わが国で初の1,000千kw級の発電用原子炉であり,格納容器内にアイスコンデンサーを設けるなど新機軸の炉であっただけに,審査会の審査もとくに慎重に行なわれた。その結果,大出力炉ではあるが,炉心の核熱設計,燃料の出力密度等在来のものに比して,特別に安全上問題はなく,さらに原子炉立地審査指針,安全設計審査指針等にも適合しており,十分に安全性は確保できるとの結論を得,その旨原子力委員会に報告された。
 なお,昭和46年度末現在,審査中のものに,日本原子力発電(株)東海第2発電所,東京電力(株)福島原子力発電所6号炉があるが,この2基はいずれもBWRで出力1,100千kwで,BWR初の1,000千kw級となっている。

(3) 原子炉施設の安全総点検
 昭和46年度には,新たに運転に入った発電所はなかったが,JPDR-IIの改造工事が完了し47年2月臨界に達した。
 日本原子力発電(株)敦賀発電所,関西電力(株)美浜発電所1号炉および,東京電力(株)福島原子力発電所1号炉は順調に営業運転が行なわれた。
 しかし,日本原子力発電(株)東海発電所において,従業員が作業中に法定基準を上回る放射線被ばくを受けるという事故が発生した。この場合の被ばく線量は直接従業員に障害を与えるものではなかったが,原子力施設の安全管理体制,機器の整備,従業員の教育訓練に問題があると判断された。
 さらに,その前に日本原子力研究所JRR-2原子炉の付属施設である廃棄物処理場の放射性廃液保管場で発生した火災事故等に対処して,原子力局では,通商産業省公益事業局と合同で発電用原子炉施設に対し,またその他の原子炉施設に対しては単独で安全総点検を実施した。その結果,施設設置者によって改善の努力が払われ,さらに事故の経験が生かされた安全管理が行なわれるようになり,原子炉施設の安全性確保は一層強化されることとなった。


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