第2章 原子力発電

§3 原子力発電所の立地

 急速に拡大しつつある電力需要を満たすことは,国民生活の向上,経済社会の発展にとって不可欠であり,原子力発電に対する期待が高まっている。
 しかし,国土が狭く,人口が密集し,また原子力に対して極めて複雑な国民感情を持つわが国において,原子力発電をすすめて行くにあたっては,そのための立地確保等において種々の問題に当面している。このため,政府,地方公共団体および電気事業者は原子力発電所の立地を円滑に推進するため,原子力発電の安全性の確保に万全を期することはもとより地元住民の理解と協力を得るために積極的な努力を重ねてきた。
 政府は,放射線モニターを集中監視するなどの安全管理や環境保全に役立てるとともに,地元との連絡を緊密にするため,敦賀市に原子力連絡調整官を派遣するなどの措置を講じた。
 同時に,福井県,敦賀市,電気事業者等が協力して原子力開発利用に関する正しい知識の普及をはかるため,福井県に原子力センターを設置した。
 また,原子力発電所の設置許可の審査において,原子炉の大型化,集中化等により必要と認められる場合には地元関係者の意見を聴取するため公聴会の開催について検討することとしている。さらに地方税法の一部改正によって,昭和47年度から事業税の配分比率が発電所の設置されている都道府県に有利なように改正された。
 このほか,政府および関係諸団体は,原子力に関する講演会,各種セミナー,巡回PR映画会,展示会等を開催し,原子力に関する一般の関心を高め,正しい知識を普及することに努めている。これらPR活動の他に,地帯整備,温排水利用等地元住民の福祉を向上する方向で種々の努力が続けられている。特に温排水問題についてはその影響について調査研究をすすめるとともに,これを積極的に利用するとの観点から,東海発電所および動力試験炉(JPDR)の温排水を利用した養魚に関する試験研究を開始している。

 このような立地確保のための努力により関西電力(株)美浜発電所3号炉が漁業補償等の問題が解決して着工の運びとなったほか,四国電力(株)伊方発電所もすでに漁業補償等の諸問題が解決の方向に向っている。現在交渉中のものとしては,東北電力(株)女川地区(宮城県)等があり,これらのほかにも電気事業者はそれぞれの建設計画地点で用地買収,漁業補償等の交渉を行なっている。


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