第12章 国際協力

§3 二国間協力

 わが国は,米,英,加の三国と原子力協力協定に基づく二国間協力の推進により,原子力技術,核燃料等の入手をはかるとともに,情報の交換,専門家の交流,共同研究等をすすめ,わが国の原子力平和利用を大きく推進してきた。
 今日,濃縮ウラン確保,新型炉の開発,原子炉安全性の研究,環境問題の解決等,共通する問題が生じており,二国間協力をすすめていくことが一層重要となってきている。

1 米国
 46年11月3,4日,第3回日米原子力会議が米国(ワシントン)において開催され,わが国からは,有沢原子力委員会委員長代理,山田原子力委員のほか原子力委員会関係者,外務省関係者が参加し,米国からはスレシンジャー米国原子力委員会委員長,ラルソン原子力委員,ジョンソン原子力委員ほか米国原子力委員会関係者が参加した。会議においては,両国間における原子力に関する協力の状況,濃縮ウランの将来の需給,廃棄物の処理処分,原子力施設の認可および規制等に関する環境問題,軽水炉の安全性,高速増殖炉,新型転換炉および高温ガス炉の開発等の幅広い分野にわたって意見の交換が行なわれ,日米両原子力委員会が日本の将来の原子力発電計画のために必要な濃縮ウランの供給量の増加について話し合いを始めること,ならびに環境と原子力利用に関する分野および軽水炉の安全性の分野について緊密に協力を進めることが合意された。
 また,ウラン濃縮国際共同事業に関して,米国政府から技術提供の条件等を聴取することを目的に,米国と関係国との間の予備会議が46年11月1日,2日ワシントンで開催された。
 本予備会談には,わが国のほか,オーストラリア,カナダ,イギリス,フランス,西ドイツ,イタリー,オランダ,ベルギー,ニュージーランドおよびECの参加があった。同会議には,わが国からは,有沢原子力委員会委員長代理の他原子力委員会関係者が参加し,本事業に対する米側の考え方等を把握することができた。
 わが国の必要とする濃縮ウランは,現在日米原子力協定に基づいて入手しているが,わが国原子力発電の進展に伴い,同協定で供給が約束される濃縮ウラン量を増加する必要が生じた。このためその供給枠の拡大をはかるための交渉が進められ,47年2月25日,米国側ウインスロップ国務次官補と日本側牛場駐米大使との間で,48年末までに着工する原子力発電所26基17,6204kw等に必要な濃縮ウラン335トンを米国から供給をうける旨の取極めが行なわれた。
 このほか,保障措置における日米技術協力会議が日米両国の保障措置関係専門家の間で昭和46年10月15日から21日まで,米国で開催され,核物質管理制度,保障措置に関する技術開発等について討議された。
 動燃事業団と米国原子力委員会との間においては,液体金属冷却高速炉に関する技術情報の交換,原研と米国原子力委員会との間においては,放射線化学に関する技術情報の交換および原子力情報一般の交換を引続き行なった。

2 カナダ
 46年9月,日加原子力会議が東京において開催され,わが国からは,平泉原子力委員会委員長,有沢原子力委員会委員長代理ほか10名が参加し,カナダ側からは,グリーンエネルギー・鉱山・資源大臣,グレイ原子力公社総裁ほか12名が参加した。会議においては,両国の原子力事情,核燃料開発,新型動力炉の開発,放射性廃棄物の処理等の幅広い分野にわたって意見の交換が行なわれた。また,日加原子力会議の機会に動燃事業団とカナダ原子力公社との間に重水炉開発に関する技術協力のための協定の調印が行なわれた。

3 フランス
 フランスとの間には,従来,昭和40年7月の書簡交換に従って原子力に関する研究協力が進められてきたが,核物質,資材等の入手を容易にすることなど日仏両国の協力関係を強化拡大することが必要となってきたため,また,フランス政府から協定締結の提案もあり,政府間協定締結の交渉が行なわれてきた。この結果,47年2月26日東京において,フランス側ギランゴー駐日大使と日本側福田外務大臣によって原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とフランス共和国政府との間の協定が署名された。
 本協定では,原子力の平和的利用のための協力の方法として,専門家の交流,情報の交換ならびに資材,設備,施設および役務の供給,受領を規定するとともに,協定に基づいて入手した資材,設備等が平和的目的にのみ使用されること,それらの資材,設備等に保障措置が適用されること等を規定している。
 同協定は,47年6月国会において承認され,近く発効する予定である。
 この協定締結により,とくに天然ウラン等の核物質の供給契約が進展するものと予想される。
 また,1972年2月フランスとウラン濃縮について共同して濃縮工場の技術的経済的問題に関する調査検討を1年間行なうこととなり,翌3月第1回会合が東京で両国専門家によって開催された。
 さらに,動燃事業団と仏原子力庁との間においては,液体金属冷却高速炉,原研と仏原子力庁との間においては,放射線化学および材料試験炉に関する情報交換を引続き行なった。

4 オーストラリア
 オーストラリアは,世界有数のウラン資源国であり日本への天然ウランの供給を可能にするため,またオーストラリア政府から協定締結の提案もあり,政府間協定締結の交渉が行なわれてきた。この結果47年2月21日キャンベラにおいて,豪州ボーウエン外務大臣,日本側斉藤駐豪大使によって原子力の平和利用における協力のための日本国政府とオーストラリア連邦政府との間の協定が署名された。
 本協定では,原子炉の平和的利用のための協力の方法として,専門家の交流,情報の交換ならびに資材,設備,施設および役務の供給,受領を規定するとともに,協定に基づいて人手した資材,設備等が平和的目的にのみ使用されること,それらの資材,設備等に保障措置が適用されること等を規定している。
 本協定は47年6月国会において承認され,近く発効する予定である。この協定の締結により,とくに天然ウランの購入,ウラン資源の開発等の協力が促進されることになろう。

5 その他
 平泉原子力委員会委員長は第4回ジュネーブ会議に出席した後,イギリス,フランスおよびソ連の各国を訪問し,わが国との原子力協力について意見交換を行なった。
 また,ドイツ連邦共和国からは,ロイシンク教育科学大臣が来日し,両国の関心事項について意見交換を行なった。
 原子力委員会は,46年度海外原子力関係招へい者として,IAEA事務局長エクランド博士,イギリス原子力公社ハウエル原子力研究所顧問,バーンズ博士,ロッテルダム医学研究所バレンセン博士を招へいし,原子力分野に関する意見の交換を行なった。


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