第11章 原子力産業
§4 核燃料加工産業

1 軽水炉燃料

 現在わが国で建設中の原子力発電所はすべて軽水炉であり,今後も当分は軽水炉中心に建設が進められると考えられる。これにともなって低濃縮ウラン燃料の需要が著しく増大しつつあるが,一般にウラン燃料の加工部門は他の核燃料部門にくらべて比較的国産化が進んでいる。
 すなわちUF6からUO2への転換加工は,これまでほとんど海外に加工を依頼していたが,住友金属鉱山(株)および三菱原子燃料(株)(MNF)がそれぞれ年産200〜240トン程度の工場を建設中であり,47年度中にはいずれも生産を開始する見込みである。
 UO2粉末から最終製品である燃料集合体への成型加工は,BWR用燃料に関しては,日本ニュクリア・フェエル(株)(JNF)がゼネラルエレクトリック社から導入した技術をもとに現在210トン/年の規模で操業中である。JNFは,需要の増大に対処して,47年1月に年間加工能力を490トンに増加する許可を受け,現在増設工事を進めている。また,PWR用燃料に関しては,三菱原子力工業(株)(MAPI)がウエスチングハウス社から導入した技術をもとに46年10月には100トン/年の工場の運転を開始した。しかし,その後46年12月三菱金属鉱業(株),三菱重工業(株)およびウェスチングハウス社により設立された三菱原子燃料(株)は三菱原子力工業(株)から100トンの成型加工施設を,三菱金属鉱業(株)から工事中の転換加工施設をそれぞれ譲り受けるとともに,年間加工能力を280トンに増加すべく,前述した転換加工施設の工事とともに増設工事を進めている。これらの工事が完了する48年度には転換から成型まで本格的な一貫生産体制が整うこととなる。
 一方,米国のユナイテッドニュークリア社(UNC,現在のガルフ・ユナイテッド・ニュークリア社)からBWR用およびPWR用の各燃料の設計,製造技術を導入し年間80トンの工場の建設計画を進めてきた住友電気工業(株)とかねてから軽水炉燃料事業に進出する意欲をもつていた古河電気工業(株)の両社は47年5月,合弁により核燃料専業の新会社を設立する計画を明らかにした。
 これは両社が所有する技術および設備を結集することにより実質的に原子炉系メーカーにより2分された状態にある国内市場に有効な競争を実現しようとするものとして大いに期待される。
 軽水炉燃料の製造に関しては,ジルカロイ被覆管の製造が重要であるが,これまでの国産燃料はすべて輸入品が使用されてきた。しかし(株)神戸製鋼所がビレットから被覆管まで約12万km/年,住友金属工業(株)がスポンジから被覆管まで約7万km/年の生産設備工楊をそれぞれ有しているほか,三菱金属鉱業(株)が工場の建設を進めておりこれらの3社の技術は全体として実用段階にあるとみられる。このため電力会社の間でも国産品の使用の動きがみられ,特に日本原子力発電(株)敦賀発電所の取替燃料2体に試験的に国産品が使用されることになったのは注目される。
 原料からスポンジまでは日本鉱業(株)および(株)石塚研究所が相当の生産実績をもつているが,46年9月(株)石塚研究所と三井物産(株)によって設立された(株)ジルコニウム・インダストリーは,原料からスポンジまでの製造技術と生産設備を(株)石塚研究所から引きつぐとともに,昭和46年9月,スポンジから素管まで一貫生産を行なうため,米国のテレダインインダストリーズ・インコーポレテッドからその製造技術を導入した。


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