第11章 原子力産業
§3 原子炉の国産化

1 原子炉の国産化と将来の見通し

 わが国の発電用原子炉の技術は,欧米先進諸国に比し,研究開発に遅れて着手したこともあり,著しく立ち遅れていた。現在わが国で運転又は建設中の原子力発電所は濃縮ウラン使用の軽水炉(BWR,PWR)が中心となっており,これらの建設は,米国から導入した技術をもととして行なわれている。わが国の原子力発電設備メーカーはいずれも海外のメーカーと技術提携している。すなわち,東芝と日立はBWRに関して米国のGE社と,三菱はPWRに関して米国のWH社とそれぞれ提携し,これをもとにして原子炉機器の国産化の努力が重ねられてきた。30万,50万,80万kw級の各々の一号炉は主に海外メーカーにより建設されたが,二号炉以降は,これらの技術を吸収し国内メーカーが建設している。即ち,現在建設中の東京電力(株)福島3号炉(BWR)は機器国産化90%,関西電力(株)美浜3号炉(PWR)は93%,同社高浜2号炉(PWR)は,89%と80万kw級までのプラントの国産化体制は一応固まってきた。しかし将来建設が予定されている100万kw級のプラントについては,海外のメーカーが主契約者となっているため,機器国産化率は50〜70%にとどまっている。((第11-1表),付録IV-3)
 機器別に,その国産化状況をみると,原子炉の安全上特に重要な機器で,その信頼性実証性が強く要求される再循環ポンプ,主蒸気隔離弁等はまだ国産化の域に達していない。しかし,制御棒および駆動装置については,近年国内メーカーは実物を試作し各種実証試験を行ない,一部実証性の目的のため,国産品を採用している。また,循環ポンプ,弁類はそれぞれの専門メーカーにより技術導入あるいは自主開発が進められているが,一般に大容量であり製作経験がないので当分は輸入に頼らざるを得ないとみられているが,メーカーは技術導入により国産化の準備を行なっているところである。
 研究開発試作に多額の費用を要する計装装置等は当面国産化することが難しく,輸入に依らざるを得ない状況である。


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