第10章 基礎研究および原子力特定総合研究
§2 原子力特定総合研究

2 食品照射

 食品に放射線を照射し,輸送および貯蔵中の腐敗,虫害および発芽等による損失の防止,保存期間の延長,食品の加工適性の向上や改質を行なうことは,食品流通の安定化および食生活の改善をはかる上に大きく寄与するものと期待されている。
 原子力委員会は,昭和42年9月,食品照射の早期実用化を促進すべく,その研究開発を原子力特定総合研究に指定し,食品照射開発基本計画を策定した。これにもとづき現在,国立試験研究機関,日本原子力研究所,理化学研究所等において9馬鈴薯,玉ねぎ,米,小麦,みかん,水産ねり製品,ウインナーソーセージの7品目について研究開発が進められている。なお,この推進にあたっては,各実施機関の関係者,学識経験者および関係行政機関の関係者からなる「食品照射研究運営会議」を原子力局に設置し,研究計画の調整評価などによって総合的な研究開発が進められるよう図っている。
 研究開発の年次計画および開発体制を(第10-1表),(第10-1図)に示す。
 昭和46年度にはこの年次計画に従って各実施機関が,それぞれの研究テーマについて,前年度にひきつづき研究開発を行なった。
 日本原子力研究所高崎研究所において,食品照射共同利用施設が昭和44年度より5カ年計画で着工され,昭和46年9月に食品照射研究棟が完成し,現在コバルト照射棟の建設が進められている。
 42年度より馬鈴薯,玉ねぎの発芽防止,米の害虫の殺虫について試験が行なわれてきたが,46年度には次のことが明らかになった。
 昭和46年度における研究成果としては,馬鈴薯について照射効果と安全性が確認され,基本計画に基づく研究が終了し,その成果報告書が作成された。玉ねぎの照射効果については,収獲後1か月以内に照射すれば7キロラド以下の線量で8か月間発芽抑制出来ることがわかり,安全性試験もほぼ終了して,現在その評価を行なっている。
 米についてはサイロ型照射装置によって照射試験を行ない,このデータにもとづき,実用規模装置の設計が行なわれた。
 また,昭和43年度よりウインナーソーセージおよび水産ねり製品の殺菌について研究が行なわれてきたが,ウインナーソーセージについては,線量分布をパッケージについて検討した結果,500ギロラド照射の場合は線量のバラツキは巾20cmの箱で1.4,巾10cmの箱で1.2と意外に大きいことが判明した。したがって実用的な照射においては殺菌線量と品質の関係から線量分布を均一にする照射技術がきわめて重要であることが認められた。

 このほか,かまぼこおよびみかんの照射については45年度に引続き照射効果に関する研究が行なわれた。


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