第9章 安全性の確保
§1 概要

 原子力開発利用を進めるにあたっては,原子力に特有の放射能問題は避けられないものである。しかし,これは適切な対策と手段を講ずることによって実害がないものとすることができる。したがって安全性の確保は,原子力開発利用にとって必須の要件であり,原子力開発利用の進展に即応して,必要な法的措置およびこれに基づく対策や体制の整備を実施するとともに,安全性の向上および確保をはかるために多大の研究努力が払われてきた。
 昭和45年度においても「核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法),「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(放射線障害防止法)等に基づいて,各種の原子力施設およびラジオアイソトープ等の取扱い施設について安全性確保のために必要な諸施策がとられた。とくに原子力委員会では動力炉安全基準専門部会において,軽水炉についての安全設計に関する審査指針について審議を終了し委員会に報告した。このほか,同専門部会は安全性にかかわる事項について専門的な調査,審議を行なった。これらに基づき安全性確保の努力がいろいろと払われている。
 原子力開発の進展にともない,原子炉の設置許可および検査,核燃料物質の使用許可および検査,放射性同位元素の使用等の許可および届出等は増加の一途をたどっており,今後はこれらの手続を含めて安全対策について,さらに検討する必要があろう。
 このほか,原子力発電所の運転に関し,地域住民の不安感を取りのぞくため,福井県,福島県と電気事業者の間で,自発的に発電所周辺の放射能の評価,検討を行ない,その結果を地域住民に周知させる体制が確立され,運用されているが,電気事業者と地域住民とのこのような協力体制は,今後益々進むものと考えられる。


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