第7章 放射線利用
§5 放射線化学

 放射線を化学反応に利用する放射線化学においては,新物質の合成や改良がきわめて有望であり,その工業化への研究開発が行なわれている。
 原研高崎研究所(高崎研)では,大学,国立試験研究機関,民間等の協力のもとに高分子物質の放射線改質,放射線重合,線源工学,放射線化学工学およびこれらに関連した研究がすすめられ,また,高分子材料の放射線橋かけ強化,エチレンの放射線気相重合,トリオキサンの放射線固相重合,ポリ塩化ビニルの放射線改質等の有望なプロセスについて,中間規模試験装置により,工業化への研究開発が行なわれている。
 また,ポリエチレン,ポリプロピレン,塩素化ポリエチレン,ポリ塩化ビニルの成型品の放射線強化等を実施し,製品の耐熱性,および耐薬品性を主眼として検討が進められた。
 エチレンの放射線気相重合については,外部線源方式の中間規模試験装置により,重液循環法を適用した試運転が行なわれた。
 トリオキサンの放射線固相重合については,原料をトリオキサンからテトラオキザンに変え,同時安定化重合について検討が行なわれた結果,市販類似品と同等以上の強度のポリマーが得られた。
 プラスチックの放射線改質の1例として,ポリ塩化ビニルについては,製品連続搬出装置を付加した試験装置による長時間運転が行なわれたほか,物性試験により,加工性,成型性,抗張力などのすぐれた点が実証された。
 このほか,高崎研においては,4フッ化エチレンとプロピレンの共重合によるエラストマーの製造研究,アクリロニトリルの放射線重合の研究板材の連続硬化試験等が行なわれている。


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