第4章 核燃料
§2 ウラン資源

1 原子力発電とウラン需要

 原子力委員会が,42年4月に改訂した現行長期計画によれば,わが国の将来の天然ウランの所要量は昭和60年度までに,その時点での原子力発電設備容量3,000〜4,000万キロワットに対し,累積約9万トン(U308ショートトン以下同じ)と予想されている。
 しかし,わが国の原子力発電規模はこの予想を大幅に上回り,50年度866万キロワット,60年度でおよそ6,000万キロワットと見込まれるに至っている。
 このような見通しのもとに,天然ウラン所要量を試算すると,昭和43年度から50年度および60年度までのウラン累積所要量は,それぞれ約1万8,000トンおよび約12万トンとなる。
 このような所要量に対してわが国のウラン埋蔵量は,昭和46年4月1日現在,平均品位約0.05%の品位のもので,約8,000トンを把握しているにすぎず,わが国のウラン需要を満たすためには,大部分を海外のウラン資源に頼らざるをえない状況である。
 46年4月現在,電気事業者が確保しているウラン精鉱は,長期契約によるもの約5万2,000トン,短期契約によるもの約3,500トンで,昭和52年度までに必要とされる量は,ほぼ全量確保しているが,それ以降60年度までの分については,半分ないし3分の1を確保しているにすぎない。
 一方,欧州原子力機関(ENEA)および国際原子力機関(IAEA)が作成した共同報告書によると,ソ連,東欧,中国を除く自由世界の45年1月現在の原子力発電開発見通しは,1980年(昭和55年)で約3億キロワット,1985年(昭和60年)で約6億キロワットとなっており,これに対する年間ウラン所要量はそれぞれ7万3,000トン,13万トンで,1985年までの累積所要量は96万トンに達するとされている。これに対して自由世界のウラン埋蔵量は1ポンド当り10ドル以下で採掘可能なものが,45年1月現在で約84万トン確認されているにすぎず,将来供給不足が懸念されていることから,世界各国が競ってウラン資源の探鉱開発に力を入れ始めている。
 このような情勢にかんがみ,原子力委員会は,46年4月「ウラン資源確保対策懇談会」を設置し,わが国のウラン資源確保およびウラン資源開発のあり方について,より強力な施策を講ずるべく現在検討を進めている。

2 海外ウラン資源の確保

 海外ウラン資源の確保については,原子力委員会はこれまで原則として民間企業を中心としてこれを推進することとし,国は探鉱開発等に関する必要な助成および誘導措置を講ずることとしてきた。
 このような方針のもとに,まず,動戸炉・核燃料開発事業団は,わが国民間企業の未進出地域において先駆的調査を行ない,この調査結果を企業探鉱以前の段階で民間に引き継ぐこととし,41年度から調査活動を行なってきた。45年度はカナダのアルバータおよびオーストラリアのクィーンズランド州について鉱床事情調査を,また,カナダのブリティッシュ・コロンビア州,オーストラリアの南オーストラリア州等については,地質調査等の鉱床精査を行なった。
 民間企業による海外ウラン探鉱活動としては,三菱金属鉱業(株)がカナダのリオ・アルゴム社と41年から米国ワイオミング州で共同探鉱を行なっており,また43年からは,電力9社および産銅6社による米国カー・マギー社とのカナダエリオット・レイク地区における共同探鉱ならびに電力9社とカナダデニソン社との米国コロラド州等における共同探鉱が進められている。
 これらの3プロジェクトは,これまでに3年ないし5年間の探鉱期間が経過したが,まだ目覚ましい成果をあげるに至っていない。
 一方,45年5月に設立された海外ウラン資源開発(株)は,フランス原子力庁(CEA)およびニジェール共和国政府とニジェール共和国アコカン西部地域で45年から共同探鉱を開始しており,有望プロジェクトとして期待されている。
 なお,三井鉱山(株)は,44年からカナダのブリティッシュ・コロンビア州において単独で探鉱活動を行なっている。

3 国内資源の探鉱

 ウラン資源の国内探鉱活動については,通産省工業技術院地質調査所が,昭和29年度から,ウラン資源等の賦存状況を明らかにするための探査を行ない,鉱床胚胎の可能性のある10地域を明らかにした。
 これらの鉱床地帯についての探鉱は,昭和31年に設立された原子燃料公社が担当し,さらにこの業務は42年に設立された動燃事業団に引き継がれた。
 動燃事業団では44年度に引き続き,主として堆積岩地域を対象として,岐阜県東濃地区およびその周辺,山口県西部地区,北九州地区ならびに福島県東部地区を重点として既知鉱床拡大のための探鉱を行なうとともに,地質調査所の調査結果で異常の認められた奈良,三重県境室生地区,北海道南部地区等において鉱床の追跡および新鉱床発見のための探鉱を行なった。
 なお,地質調査所は,主として,探査技術の向上に関する研究および鉱床成因に関する研究を実施した。


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