第12章 国際協力
§2 国際機関との協力

1 国際原子力機関(IAEA)

 IAEAの総会,理事会等における活動は次のとおりである。

(1)総会
 IAEA第14回総会は,45年9月22日から28日まで,85カ国,3国際機関(その他オブザーバーとして1カ国,16機関)の参加のもとにウィーンにおいて開催された。わが国からは,新関在オーストリア大使を代表として参加したほか,山田原子力委員会委員がIAEAの要請によりわが国の原子力開発について特別講演を行なった。
 会議は,開会式のあと事務局長および各国代表が演説を行なった後,1971-76年事業計画および1971年予算,憲章第6条(理事会構成)の改正,理事国の選出等の議題について審議が行なわれた。
 各国代表による演説では,核兵器不拡散条約発効(45年3月)後の初めての総会であったため同条約関連問題,とくに保障措置問題に言及するものが多く,その他環境問題,技術援助,地域協力,理事会構成の改訂等に関する意見が多く述べられた。わが国代表は,わが国の原子力事情を紹介し,放射性廃棄物処理処分の問題については,IAEAで積極的に検討する必要があること,保障措置の問題について,7月理事会において承認された保障措置委員会第1回報告書は好ましいものであるので,具体的な保障措置手続はこの原則に従い今後とも審議が続けられるべきこと,財政的に非核兵器国に不当な負担が課せられてはならないことを強調した。
 1971-76年事業計画および1971年予算については,計画技術予算委員会報告通り採択された。この結果1971年の経常予算は,前年の10.1%増の1,300万ドル(4,680百万円)となったほか,技術援助の財源となる任意拠出金の目標額が,200万ドルから250万ドルに引き上げられた。なお経常予算の10.1%の伸び率のうち5%は保障措置関係経費の増加に起因するものであった。
 憲章第6条(理事会構成)の改正の問題については,NPTその他の情勢の変化に対応した公平な地理的配分とする必要がある等の理由から,前年に引き続き審議が行なわれたが,米国,イタリア等(わが国を含む)34カ国による憲章第6条改正共同決議案が採択された。その主な内容は,理事国数を34または35(現行25)とし,選出区分に変更を加えるものであるが,この改正は全加盟国の3分の2以上の国が受諾書を寄託すれば,その効力を生ずることとなっている。

(2)理事会
 理事会は,IAEAにおける諸活動の実質的審議決定機関として重要な役割を果たしているが,わが国はIAEA創設以来理事国として積極的にその活動に参加している。
 本年度における理事会での活動もNPT下の保障措置問題および憲章第6条改正問題に重点が置かれ,通常年4回の理事会のほかに,前者の問題について検討するために2回,後者の問題について1回の特別理事会が開催された。

(3)その他
 IAEAは,原子力平和利用活動の一環として毎年数多くの専門家パネル,シンポジューム等の各種会議を開催しており,わが国からも積極的に参加している。45年度には,わが国からは計34の専門家パネル・シンポジューム等の会議に延べ84名が参加した。
 また,45年3月国際原子力情報システム(INIS)が発足し,わが国もこれに参加し,原研を中心に積極的に情報の交換を行ない,その活動に貢献している。
 そのほか,IAEAが行なう技術援助の一環として,わが国から開発途上国に対して技術的専門家を派遣するとともに,IAEAフェローシップによる留学生の受入を行なった。

2 欧州原子力機関(ENEA)

 ENEAは,沸騰重水炉開発計画(ハルデン計画),高温ガス冷却炉開発計画(ドラゴン計画)等の共同研究,共同事業,科学協力,規則および管理に関する共同基準の作成,経済的調査等の活動を行なっているが,わが国からは,ハルデン計画に原研が,サクレーにある中性子データー編集センターおよびイスプラの計算機プログラムライブラリーに政府が参加しており,有益な技術情報を入手している。また,ザイベルスドルフ食品照射計画は1968年に終了したので,新たにIAEA,FAOの協力の下に1971年から発足した新食品照射計画に,わが国政府として参加することとなった。このほか,わが国はENEAが主催する各種の研究委員会,スタディグループに参加したほか,運営委員会にオブザーバーとして出席している。
 またドラゴン計画運営委員会議長マリエン博士等が来日し,原研と高温ガス炉に関する協力問題について意見交換を行なった。


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