§10 保障措置制度の整備

 現在,わが国では米国,カナダ,英国などと原子力協力協定を結び原子力開発利用の進展をはかっているが,これに関連し,これらの国から供給される核物質等は国際原子力機関(IAEA)の保障措置の適用をうけている。
45年度には延約90施設,約380人・日の査察がIAEAによって行なわれた。保障措置関係業務は,今後核物質の使用量のより一層の増加を考えれば,ますます複雑となるので,正常な研究開発,産業活動に支障をきたすことのないよう,今後もその合理化をはかっていく必要がある。
 一方,核兵器不拡散条約(NPT)は45年3月発効し,わが国はこれに先立ち同年2月調印を行った。政府は同条約の調印に際して声明を発表し,同条約によってわが国の原子力平和利用がいささかも妨げられてはならないこと,同条約にもとづきわが国が締結する保障措置協定の内容が,他の国のそれに比して不利でないこと,査察は各国の管理制度を活用し,可能な限り簡素かつ合理的なものでなければならないことなどの点を強調した。
 わが国は,上記声明の実現をはかるため,45年3月科学技術庁原子力局に保障措置検討会を設置して,NPTに基づく保障措置に関し適切な実施方法および技術的諸問題について検討した。
 NPTにもとづく保障措置については,IAEAは45年4月,理事会に保障措置委員会を設置しわが国をはじめ47か国が参加して検討を行ない,46年3月までに延80数回にわたり審議を行ない,NPT下の保障措置モデル協定を作成した。
 この保障措置モデル協定の作成にあたって,わが国は,前記政府声明および検討会の検討結果にもとづいて,わが国の考え方を強く主張し所期の目的を達成した。このモデル協定は,今後IAEAが各国と保障措置協定の交渉を行なう上での基礎となるものであるが,これによって保障措置に関する各国との平等性確保のための骨組みができたものと考えられる。
 また,今後,わが国の保障措置制度を整備するためには技術的問題等解決すべき課題が多いので,46年4月,保障措置検討会を改組し,国内体制を含めこれらの問題についてされに検討をすすめている。


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