§9 国際協力

 わが国の原子力開発利用の発展にとって国際協力の推進は極めて重要な要素である。このため政府においては国際原子力機関(IAEA)に加盟し,また欧州原子力機関(ENEA)に準加盟して,積極的に多国間協力をすすめる一方,米国,カナダ,英国などと原子力協力協定を結び原子力全般にわたる技術,情報の交換,核燃料物質の供給などにおいて強力に二国間協力をすすめてきた。また,動燃事業団,原研等の研究機関においても,原子力先進諸国の原子力機関との間に協力協定を結び動力炉開発,放射線利用の研究等広汎な分野で積極的な国際協力を行なっている。
 多国間協力については,わが国は創設以来IAEAに加盟し,理事国としてその活動に参加している。45年度におけるIAEAの最大の課題は,核兵器不拡散条約(NPT)に基づく保障措置制度のあり方の検討であり,IAEAは理事会の下に保障措置委員会を設置して検討を行ない, その結果は46年4月の理事会で承認された。これと平行して,理事会構成の再検討の問題も重要な問題として検討が行なわれたが,45年9月の総会において,理事会を拡大し,かつ地理的配分の公平を図るためのIAEA憲章第6条の改正案が採択された。またENEAにおいては,中性子データー編集センター,計算機プログラムライブラリーおよび沸騰重水炉開発計画等の共同事業に参加してひきつづき活動している。
 二国間協力については45年6月日英原子力会議が英国で開催され,両国の原子力事情と将来の見通しなどについて意見の交換がなされたほか,特に高速増殖炉等の開発において今後一層協力を深めることで意見の一致がみられた。また米国との協力については,45年3月の日米原子力会議の合意にもとづき,濃縮ウランの追加供給についての交渉を行なった結果,48年までに建設に着手される原子炉13基に必要な濃縮ウランの供給を得ることについて事務的合意が得られた。
 このほか,フランスとの間でも高速増殖炉,放射線化学等の研究開発について協力が行なわれているがこれを今後一層強化するため包括的な政府間の協定を締結する方向で交渉がすすめられている。
 また動燃事業団,原研などの研究開発機関における国際協力についても,45年6月従来の原研と英国原子力公社との協定にかわり原研,動燃事業団と英国原子力公社との間で新たに高速炉開発に関する協力協定の調印がなされたほか,46年4月原研と米国原子力委員会との間に技術情報の交換に関する覚書の締結がなされた。
 フランスとの間でも動燃事業団は高速炉開発,原研は放射線化学の分野において,それぞれフランス原子力庁との協力を行なっているが,46年5月新たに原研とフランス原子力庁との間で材料試験炉に関する協力協定が締結された。また西ドイツとの間でも動燃事業団とカールスルーエ研究所の間で高速炉開発についての協力協定が締結された。このように,わが国の原子力開発利用の進展にともない,多岐にわたって国際協力が実施されるに至っている。


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