§6 放射線利用

 放射線利用については,品質管理,工程管理などの工業利用,放射線治療や核医学などの医学利用,照射やトレーサー利用などの農業利用等各方面に広範に利用されている。とくに45年度には放射線滅菌法による医療用具の国内における使用が認められた。一方,食品照射,放射線化学等について積極的に研究開発が進められ,実用化の見通しが強まりつつある。放射線利用機器については,厚み計,密度計などの測定器,破壊検査装置をはじめ,放射線利用分析装置など各種機器が民間企業において著しく普及し,工程管理,品質管理など生産工程の自動化を図る上で大きな役割を果している。
 また,放射線利用に関する研究開発は民間企業,日本原子力研究所(原研),国立試験研究機関,大学や主要な病院等で行なわれているが,とくに貯蔵性,加工性等の向上により食品流通の合理化が期待されている食品照射については,原子力委員会が原子力特定総合研究に指定し,馬鈴薯,玉ねぎ,米,ウインナーソーセージ,小麦,みかんおよび水産ねり製品について,照射試験が行なわれたが,馬鈴薯については,すべての試験がほぼ終了し,近く食品衛生法による許可を得て実用化に移される見通しが強くなった。
 また,放射線化学の分野では,原研高崎研究所および同大阪研究所等で高分子物質の放射線による改質,重合等に関する研究が行なわれており,ポリ塩化ビニールなどについては,加工性,成型性,抗張力などが改善されることが実証されている。
 放射線利用を公害防止に応用することについては,放射性同位元素をトレーサーとして利用して種々の公害の原因を追跡する調査等が,原研,国立試験研究機関等により行なわれている。


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