第10章 放射性廃棄物の処理処分
§1 概要

 わが国では,「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」によって,放射性同位元素等使用事業所(RI等使用事業所)を「核原料物質・核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」によって,製錬,加工,再処理等の事業所および原子力発電所を対象として,それら原子力施設から発生する放射性廃棄物に対する規制を実施している。
 放射性廃棄物は,RIを輸入しはじめた昭和25年から34年ごろまでは,その量もまだ微々たるもので,このため,回収機関もなく,各利用者が各自貯蔵保管を行なっていた。その後RIの利用をはじめ,原子力開発利用全般の進展に伴い,放射性廃棄物の量は年々増加し,各事業所での貯蔵保管は次第に困難となってきた。
 このため,科学技術庁は,34年度から,日本放射性同位元素協会(放同協)が行なう原研以外の事業所からの放射性廃棄物回収事業に対し,補助金の交付など必要な助成を行ない,放同協による全国的な規模の放射性廃棄物の一元的な回収貯蔵,保管をすすめてきた。
 この間原子力委員会は36年,放射性廃棄物を合理的に処理するための方策を検討することを目的として廃棄物処理専門部会を設置した。同専門部会は将来,わが国の原子力開発にともなって発生する相当量の放射性廃棄物に対する基本的な考え方をまとめた報告書を39年6月に提出した。
 原子力委員会は,この報告書にもとづき当面この報告書によって必要とされている放射性廃棄物の処理,処分に関する研究開発の推進をはかりつつ,今後,原子力開発の進展に応じて所要の方策をたてることとした。
 このようにして,放射性廃棄物処理処分の研究開発は,日本原子力研究所(原研),動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団),放射線医学総合研究所(放医研)などの国立試験研究機関をはじめ,民間機関においても実施されてきた。
 一方,原研は,40年2月アイソトープ事業部を発足させ,その業務の一部として,放射性廃棄物の処理を行なうこととした。
 しかし,その後の原子力開発利用の進展に伴ない原子力施設から発生する放射性廃棄物のうち,放射性固体廃棄物がかなりの量発生する見通しとなり,放射性固体廃棄物処理処分検討会が,44年9月に原子力局に設置され,審議を続けている。


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