§3 安全性確保に関する研究

 日本原子力研究所においては,45年度においても前年度に引続き各種の安全性確保に関する研究が実施された。すなわち原子炉事故に関する熱工学的研究については軽水炉冷却材喪失事故試験装置を用い実験を行ない種々の解析を行なった。
 JPDR圧力容器の安全性については,圧力容器モデルを用いたクラッグの進展に関する研究を実施するとともに,圧力容器材料の腐食疲労試験を実施し,クラックの発生,成長およびクラックの停滞などを追求した。F.P.
 の放出に関する研究については,温度による放出率の変化,ヨウ化水素の気相安定性等について実験を行なった。また,原子炉の反応度事故に関する研究については,炉心破壊に至る圧力波の発生等に関する調査解析等を実施した。
 原子力平和利用研究委託費による研究においては原子炉配管系の応力疲労試験等を実施し,配管系の構造設計基準に必要な資料を得た。また,原子炉施設の耐震に関する研究については,建物,機器および配管系の地震時における振動特性の解析を行ない,耐震設計コードに必要な資料を得た。原子炉格納容器の漏洩率の測定基準に必要な試験研究として,格納容器のモデルを用い漏洩率の測定精度の向上,漏洩ガスの流出特性の推定等の解析評価を実施した。
 原子炉施設に使用されるフィルタの性能の評価に関する試験としては,大気を種々のふん囲気に変化できる装置を用い,活性炭フィルタについてヨウ化メチルの捕集実験を行ない活性炭の劣化の程度を測定し,フィルタの検査基準設定のための基礎的資料を得た。また,使用済燃料の輸送時に必要な輸送容器に関する落下衝撃試験については,容器のモデルにより落下試験を行ない,落下時の加速度の測定,変形の観測等を行ない輸送容器の安全設計およびその評価手法の確立に必要な資料を得た。軽水炉燃料体からのF,P.の放出に関する研究としては,燃料の高温時におけるF,P,の挙動,放出量の測定,燃料体から冷却水中への移行等について検討を行なった。放射性廃棄物の処理処分に関する研究としては,固化体の供試体を用い,固化体の性状と溶出率等との関係,圧力による固化体の変形,溶出した核種の環境での移動等について試験を実施した。放射性物質取扱用防護具の安全性に関する研究としては,各種ふん囲気中において,防護具の防護効果の信頼性について試験を実施した。さらに,放射線被曝を受けた後の障害の回復を促進する有効な物質の開発等を実施するなど各種の安全研究を実施し,安全評価解析に必要な基礎的資料を得た。


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