§3 世界の原子力発電

 世界の原子力発電の現状は,(第3-3表)に示すとおり,1970年末現在運転中の総電気出力は,2,019万キロワットであり,そのうち,米国828万キロワット(42%),英国475万キロワット(23%),フランス162万キロワット(8%),ソ連150万キロワット(7%)となり,四大国で総発電容量の80%を占めている。特に米国は自国で開発した軽水炉の技術的進歩により,全世界の総発電量の半分近くを占めるにいたった。これらに続いて西独,日本,イタリアが主要な原子力発電国となっている。

 建設中および計画中の原子炉の総電気出力は1億2,458万キロワットに達し,前年度より1,600万キロワット(15%)増加している。昨年1年間で最初の本格的な原子力発電施設を発注した国にはノルウェー,ブラジルなどがある。このほか,メキシコ,オーストリア,南アフリカ等の国々でも原子力発電所の建設が計画されており,このような原子力発電に対する世界的な関心の高まりにより,1980年には,原子力発電設備を有する国は,30ケ国を越えるものと予想される。
 炉型別の発電量((第3-4表))についてみると,軽水炉は,運転中のものについては1,161万キロワット(57%)と全発電規模の半分以上を占め,建設・計画中については1億673万キロワット(87%)となっており,その大半を占めている。ガス冷却炉については運転中のものは637万キロワット(31%),建設・計画中のものは746万キロワット(6%)である。
 米国では1968,69の両年原子炉の発注量が減少したが,70年には約1,300万KWと増大の方向に向い,71年にも同様の傾向が見込まれている。英国は,現在,28基の原子力発電設備を有し,さらに,580万キロワットの設備を建設中である。これらはすべて,ガス冷却炉であり,英国では今後も改良型ガス冷却炉(AGR)がその中心型となるものとみられている。天然ウラン黒鉛滅速炭酸ガス冷却炉を中心に開発してきたフランスは,経済性の欠陥により,1969年11月政策を変更し,軽水炉を導入すこるととして,昨年は新たに,130万キロワットの軽水炉の建設に着手した。
 カナダでは天然ウラン重水減速沸騰軽水型炉(CANDU-BLW)の開発を進めていたが,その原型炉は1970年11月臨界に達し,71年4月より送電を開発した。
 ソ連でも,独自の黒鉛減速炉と軽水炉による原子力発電所の運転や建設が進められている。
 世界の原子力発電は,以上の如く急速なテンポで増加しつつある。これに加えて1地点に発電炉が集中化する傾向がみられる。これらに対処するため米国においては,温排水および低線量被ばくに関する影響など環境保全対策に万全をつくすべく永年の間,基礎調査研究が進められている。

 

 


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