§2 高速増殖炉の開発
1概 要

 高速増殖炉は軽水炉や新型転換炉と異なり,主として高速中性子による核分裂反応を利用するとともに,消費された以上の核燃料を生成する画期的なものであり,これによりウランの持つエネルギーをはるかに効率よく利用できる炉である。このため,高速増殖炉は核燃料の問題を根本的に解決する理想的な動力炉であり,将来の原子力発電の主流となるものと考えられている。
 世界の原子力先進諸国においても,このような認識のもとに,ナトリウム冷却型高速増殖炉の開発を国のプロジェクトとして進めている。なかでも英国,フランスおよびソ連は実験炉の建設経験をもとに30万キロワット程度の原型炉の建設をすすめており,また,米国および西独においても近く原型炉あるいは実証炉の建設を開始する計画を進めている。
 このような情勢をふまえ,動燃事業団は,世界の先進諸国に伍して開発をすすめるため,先に述べた基本方針および基本計画にもとづき,プルトニウム・ウランの混合酸化物系燃料を用いるナトリウム冷却型高速増殖炉の開発を鋭意すすめているが,現在のスケジュールによれば,実験炉「常陽」については,初期熱出力5万キロワット(目標熱出力10万キロワット)のものを49年に,原型炉「もんじゆ」については,電気出力30万キロワット程度のものを53年頃に完成し臨界に至らせることとなっている。このための開発計画の概要は(第2-1図)のとおりである。


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