§1 概要

 昭和45年度における原子力開発利用に関する国際協力は,前年度にひきつづき国際原子力機関(IAEA)を中心とする多国間協力ならびに米国,欧州,その他の国に対する二国間協力についての積極的な努力が払われた。
 多国間協力として,IAEAについては,45年9月に開催された第14回総会および年度内に7回開催された理事会に,わが国より代表を派遣してその討議に積極的に参加したほか,開発途上国の専門家を対象としたIAEA研修コースの開催,各種専門家会議への参加等その他の活動にも協力した。
 本年度におけるIAEAの活動の中心は,核兵器不拡散条約(NPT)のもとにおける保障措置の問題であり,NPTにもとづきIAEAが実施すべき保障措置のあり方について保障措置委員会を設置して検討を行なった。同委員会は46年3月にすべての検討を終え,その結果は4月の理事会で承認された。これにより,NPT加盟国とIAEAとの間でNPTに基づく保障措置協定の交渉が行なわれることとなった。また,昭和43年,NPTに関連して開催された非核兵器国会議において提起されたIAEA理事会構成の再検討についても大きな問題としてとりあげられ,44年から憲章改正委員会を設け検討が続けられていたが,第14回総会において,理事会構成に関する憲章第6条の改正決議が採択された。さらに,46年9月にジュネーブにおいて開催される国連主催第4回原子力平和利用国際会議に参加するため,45年半ばからそのための準備が進められた。
 二国間協力についても,米国,英国,フランス,オーストラリア等を中心に活発に行なわれ,とくに45年6月には日英原子力会議を英国において開催し,またフランスとの間に原子力協力協定を締結するための交渉を開始した。このほか,カナダ,ドイツ,オーストラリア,イタリア等との間でも原子力関係者の相互訪問があり,これら先進国との協力関係の進展がはかられた。
 一方開発途上国との協力についても積極的に進められ,主としてIAEAを通じて,留学生の受入れ,専門家の海外派遣を行なった。
 このほか,動燃事業団,原研等と米国,英国,フランス,ドイツ等の原子力機関との間において,高速増殖炉の開発,放射線化学等の分野で積極的に協力が行なわれている。


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