§1 放射能対策本部の活動

 政府は,昭和36年10月,核爆発実験にともなう放射性降下物の漸増に対処するため,内閣に放射能対策本部を設置し,放射能の人体に対する影響に関する研究の強化,放射能測定分析法の充実,放射能に対応する報道,勧告,指導,その他放射能対策にかかわる諸問題について,関係機関相互の連絡,調整を緊密に行なってきた。また41年12月,中国の第5回核爆発実験に際しては,石川県輪島において,わが国ではこれまでの最高の観測値を記録したことにかんがみ,放射能対策本部は,42年6月,放射性降下物に対する緊急時対策および放射能調査体制の強化についての方針を決定した。
 この方針にもとづき,原子力局では,43,44年度の2カ年計画で地上における環境放射能水準を全国的に把握するため,空間線量測定用モニタリングポストを12カ所に,また,核爆発実験後,早期に牛乳などをとおして内部被ばくを与えると考えられるヨウ素-131の迅速測定を行なうため,波高分析器を6カ所に配備したが,さらに45年度においてはモニタリングポストを2カ所(宮城,島根の両県),波高分析器を2カ所(静岡,岡山の両県)に配備する等放射能調査体制の強化をはかった。
 また45年5月15日,フランスが南太平洋ムルロア環礁において核爆発実験を行なうとの通告に接し,その前日の5月14日放射能対策本部幹事会を開催し,情報の交換や放射能調査体制等を含む対策について協議した。その結果,従来の経緯からみて,国内の放射能調査については特別の措置をとる必要はなく,平常時の監視体制により核実験の推移を見守ることとした。
 なお,フランスは,同海域において5月15日につづいて同月22日および7月4日と3回核実験を実施したが,わが国への影響は全くみられなかった。
 さらに,45年10月15日中国が同国西部ロプノール湖付近において行なった第11回核爆発実験に伴い,10月15日および同月19日に,それぞれ放射能対策本部幹事会を開催し,放射能対策等について協議した。この結果,1O月15日以降,緊急時調査体制をとり,調査体制の強化をはかったが,その後,核爆発実験によるわが国への影響がないことがわかり,10月19日この体制を解除して,平常時の監視調査体制に移した。
 また,放射能対策本部幹事会は,最近,放射性降下物による土壤中のストロンチウム―90の蓄積量が調査地域の一部において「放射能対策暫定指標,持続事態対策第2段階」たる100ミリキューリー/平方キロメートルを超える値が得られていることにかんがみ同指標に定める行政措置に関する運用について,46年3月10日付録II-11のとおり「申し合せ」を行なうとともに,該当都道府県に対して継続して今後も食品,農作物中の放射能水準の把握に努めるよう指示した。


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