§8 安全性の確保と関連施策

 原子力施設の安全性確保の重要性にかんがみ,政府は「核原料物質,核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)および「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(放射線障害防止法)にもとづき積極的に必要な措置を講じてきた。
 従来から原子力施設については事前にその安全性について十分検討を加え,設置を許可してきたが,近年における原子力発電所の急増,動力炉開発の本格化,再処理施設の建設等の原子力開発利用の著しい進展に応じて,安全基準をはじめ安全性の確保に関する具体的措置等について,さらに慎重な評価検討を加えている。とくに昭和45年度においては,動力炉安全基準専門部会において,軽水炉についての安全設計に関する審査指針等についての報告がまとめられた。
 また,原子力施設の安全性について,さらに充実した実証的データーを得るため,安全性確保に関する研究が,昨年度にひきつづき原研およぴ政府の委託費をうけた民間機関において,計画的に実施されている。
 一方,近年の発電用原子炉の急速な増加に伴なって,濃縮廃液,雑固体等の放射性廃棄物は,今後多量に発生すると予測されるので,その適切な処理処分,および今後行なう必要のある研究開発等について,原子力局に設置された放射性固体廃棄物処理処分検討会は昨年度にひきつつづき精力的な検討を進めており,近々報告書をまとめることとしている。
 さらに,環境保全を重視する立場から,原子力局は従来から,大気,雨水等の一般環境,食料,人体関係についての環境放射能の調査を進めていたが,今年度は新たに東京湾の海底土について放射能測定を行なうなど積極的対策を実施した。しかし,原子力開発利用の一層の進展に応じて今後,放射性物質の食物連鎖,低放射線被ばくの影響などについて,さらに綿密な研究を推進し,適切な対策をとる必要がある。
 このほか,現行の原子力損害賠償制度についての見直しを行なっていた原子力損害賠償制度検討専門部会は,45年11月原子力委員会に対し報告を行なった。これにもとづき政府は,①国の援助に関する規定の適用を,さらに10年延長し,56年12月末までに運転を開始する原子炉に適用すること。
②原子力船関係の賠償制度を整備し,原子力船の国際的相互寄港の際の損害措置および責任限度額の決定は政府間協定によることとする。③原子力損害賠償措置額を50億円から60億円に引き上げること等を骨子にする原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案を第65回国会に提出した。同法案は両院でそれぞれ採決され,46年5月1日公布された。


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