§3 核燃料確保

 原子力発電の進展に対処して核燃料サイクルの確立をはかることが極めて重要である。現在,核燃料加工,使用済燃料の再処理などの面で逐次進展をみているが,ウラン資源および濃縮ウランの確保などについては,長期的には産業体系としての核燃料サイクルの確立をめざし,さらに積極的な施策を講じてゆく必要がある。

 わが国の天然ウランの需要は,最近の見通しによれば,昭和43年度から50年度までに累積約1万8,000トン(U308ショートトン,以下同じ),60年度までには約12万トンに増大することが見込まれている。このため,電気事業者は海外の鉱山会社と長期契約を結びその確保に努めており,46年4月現在の確保量は約5万5,000トンに達している。また電力会社,鉱山会社等では外国の鉱山会社と共同で米国,カナダの三地城において探鉱開発活動をすすめており,45年5月に発足した海外ウラン資源開発(株)は,フランス原子力庁,ニジエール政府と共同でニジエールのアコカン西部地城において探鉱活動を開始した。
 さらに,動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)では民間の探鉱活動に先駆けて海外ウラン事情の調査,探鉱活動などをすすめているが,45年度においては,カナダ,オーストラリア等において調査を行つった。
 しかし,今後増大する需要を満たすためには,さらに積極的にウラン資源の確保をはかる必要があるので,原子力委員会は46年4月,ウラン資源確保対策懇談会を設け,ウラン資源の長期的な確保策,探鉱開発のあり方等について検討をすすめている。
 現在建設がすすめられている原子炉は濃縮ウランを利用する軽水炉である。最近の見通しではわが国の濃縮ウラン需要量は昭和50年度には約3000トン/年(分離作業量),60年度には8000トン/年となっている。この必要とされる濃縮ウランは当分の間は,日米原子力協定にもとづき米国からの供給に期待することとしており,これまですでに161トン(U-235)が提供されることになっていたが,45年度においては,さらに48年までに着工予定の原子炉に必要な濃縮ウランの追加供給について交渉がすすめられ事務的に合意された。しかし今後予想されるわが国の原子力発電に対応して,さらに多量の濃縮ウランを確保する必要がある。
 一方,米国の現在の供給能力は年間最大1万7000トン程度であり,出力増強計画を実施したとしても1970年代の後半には自由世界の需要をまかないきれなくなるものと見られている。このため,欧州各国においても積極的に濃縮ウランの自主確保策を講じつつある。英国,西独,オランダでは三国共同で遠心分離法による濃縮プラントの建設をすすめつつあるほか,フランスもガス拡散法によるヨーロッパ共同濃縮工場建設計画の提案を行っている。
 このような状況のもとでわが国はウラン濃縮の研究開発を原子力特定総合研究として,積極的にすすめているが,さらに内外の情勢を勘案し,濃縮ウランの自主的な確保策について具体的に検討を要する段階に立ち至った。このため原子力委員会は,45年10月,濃縮ウラン対策懇談会を設け,海外の動向の分析,ウラン濃縮の技術開発のあり方と推進方策,および濃縮ウランの長期安定確保策等について鋭意審議をすすめているところである。
 このほか,動燃事業団による再処理施設の建設については,地元の反対等により着工が遅れていたが,昭和44年10月,茨城県議会より基本的な同意が得られたことなどから進展をみ,46年6月建設に着手し,49年度内に完成を予定している。


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