§2 原子炉の設置と運転にともなう安全対策


  1動力炉安全基準専門部会の審議

 動力炉安全基準専門部会は,わが国の原子力発電の進展および新型炉(ABR,ATR)の開発にともないわが国の安全設計基準の整備のため原子力委員会のもとに,昭和43年10月に設置されその後積極的に審議を行なって来た。
 同部会は諮問事項のうち,「新型動力炉の安全審査指針」に関して「高速実験炉の安全性の審査の進め方」を昭和44年9月に,「プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量等の策定」について昭和44年11月に,「新型動力炉の安全審査指針」に関して「新型転換炉の安全性の審査の進め方」を昭和45年3月に,「軽水炉についての安全設計に関する審査指針」を昭和45年4月にそれぞれ審議を終了し,原子力委員会あてその結論の報告を行なった。
 これらの報告のうち「高速実験炉」および「新型転換炉」の安全性の審査の進め方は動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)が茨城県および敦賀市にそれぞれ設置する高速実験炉および新型転換炉についての具体的な安全審査のすすめ方を定めたものであり,「プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量の策定」は前述の高速実験炉を始め,プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価に必要なめやすとなる線量を定めたものである。また「軽水炉についての安全設計に関する審査指針」は,軽水動力炉の安全設計についての審査上の基準となる重要事項について集約したものである。
 同部会は,諮問事項の「現行原子炉立地審査指針の具体的な適用に必要な事項に関する検討,整備」および「原子炉設置許可申請書の記載のあり方」についても目下各小委員会を設けて審議中である。
  2高速実験炉専門家検討会の設置

動燃事業団が設置する高速実験炉(FBR)は昭和45年2月設置許可が与えられ詳細設計および工事の段階になったが,高速実験炉は在来炉に比しより慎重な配慮が必要であり,科学技術庁は原子炉等規制法の設計及び工事の方法の認可の段階における種々の技術的事項等の検討を加えるため,昭和45年3月高速実験炉専門家検討会の設置を決定した。同検討会は,学界研究機関等の専門家約20人でもって構成し,高速実験炉の完成する昭和48年度末までの間,工事設計等の技術的事項について検討する。
  3原子炉の安全審査

原子炉については,設置または設置変更を行なう場合,内閣総理大臣の諮問により,原子力委員会において厳重な審査が行なわれている。
 このうち,とくに,安全性にかかわる事項については原子炉安全専門審査会において専門的な調査,審議を行ない,原子力委員会は,その報告をうけて安全性以外の許可基準についても審議をしたうえで,内閣総理大臣に答申することになっている。
 原子炉安全専門審査会は,44年度には9回開催され,19件の原子炉の設置または変更について安全審査を終了した。このなかにはわが国初の動燃事業団が設置する高速実験炉ならびに発電用動力炉3基が含まれている。
 設置または変更の概要は(付録Vの2)に示すとおりである。
  4原子炉の設置許可および検査

原子炉を設置し,または設置の変更をしようとする者は,原子炉等規制法にもとづき,その設置または変更について内閣総理大臣の許可をうけ,さらに発電用原子炉および舶用原子炉以外の原子炉については,原子炉等規制法にもとづき,建設工事の着手前に設計および工事の認可,工事の施行過程および完成時に使用前検査をうけなければならないことになっている。
 また,発電用原子炉については電気事業法により,舶用原子炉については船舶安全法により,それぞれ所要の認可,検査等を受けなければならないことになっている。
44年度に新たに設置が許可された原子炉は中国電力(株)島根原子力発電所の1号炉,関西電力(株)高浜発電所の1号炉,東京電力(株)福島原子力発電所の3号炉および動燃事業団大洗事業所の高速実験炉の4基であり,44年度末までに許可された原子炉は臨界実験装置を含めた34基となった。
 原子炉設置の年度別の許可状況は,(第9-1表)に示すとおりである。

 なお,わが国における原子炉の設置状況は付録Vの1に示すとおりである。
 また,原子炉の設置および変更にともなう認可および検査については,原子炉等規制法にもとづき約28件の許可を行なうとともにそれにともなう数多くの使用前検査を行なったほか,原子炉施設の機能保持のため年1回の定期検査が各原子炉について行なわれた。
 また,発電用原子炉については電気事業法,原子力第1船については船舶安全法にもとづき所要の認可および検査等が関係省庁において行なわれた。


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