§６ 海外における放射線利用の動向海外においては,放射線利用の努力は早くから積極的に進められていたが,最近ではすでに産業として確立され,放射線の利用は人々の生活に定着しつある。さらに本格的な実用化をめざして産業界に,大きく進出しようとする動きがみられる。
放射線利用の最大の分野は照射サービス部門であり,米国ではすでに家庭用酵素洗剤や化粧品原料のガンマ線照射滅菌は企業化されており,酵素洗剤の市場のほぼ半分がこのガンマ線照射を受けている。さらに,建築材料,リベット等の強化や毛織物類の非熱プレス処理,ポリエステルやアセテート繊維の脱色等の照射サービスも実施され,その結果十分に採算がとれると判断され,照射能力の大幅な拡張がはかられつつある。また,照射ウッドプラステイックは需要が増大し,プール型60Co線源による床板生産設備の建設も進められている。
使いすて医療器具については,欧米では,放射線殺菌が常識となっており,広く行なわれている。英国とおいては,伝染性疾患に対する医療器具の消毒用として,60Co殺菌装置が,内外に多数販売されるまでにいたっている。
食品照射については,ソ連では早くから小麦,肉類,果実等の照射生産が行なわれてきた。米国,フランス,カナダでも積極的にとりくんでいる。
また,最近,中性子利用がかなり一般的になり,中性子回析,ラジオグラフィー等に必要な中性子源として小型原子炉が商業規模で生産されるようになり米国,英国において販売されるようになっている。
ラジオアイソトープを利用した,いわゆるアイソトープ電池は,すでに実用化され,さらに広範な種類のものが開発されつつある。とくに,米国では,宇宙開発計画の一環としてSNAP計画があり,すぐれたアイソトープ電池が開発され実用に供されている。
これらアイソトープ電池の応用として,心臓に周期的なパルスを与え,心臓の鼓動を整えるペースメーカーの開発が欧米では進められ,動物実験が行なわれており,成果が得られている。米国,英国,フランス,ドイツにおいてはとくに力を入れており,フランスでは,心臓病の患者に移植手術が行なわれるにいたっている。
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