第6章 放射線利用

§1 概要

 放射性同位元素(ラジオアイソトープ)や各種放射線を利用する事業所は,医学,農業,工業の各分野において,逐年増加し,昭和44年度末で,総数は1,835となっており,43年度末の1,662に比して173増加している。放射線利用事業所数の年度推移については(第6-1図)に示した。

 今年度の特徴は,民間企業の伸びが一層大きくなり,医療機関を大幅に上回っていることである。これは特に,工業利用において,品質管理,工程管理等の面で放射線利用についての研究開発が進展し,その利点がより広範に認識されてきたためであるといえよう。
 また,民間の放射線照射需要も一段と増加し,これにともなって,43年度に設立された財団法人放射線照射振興協会につづいて,44年度は日本アイソトープ照射協同組合が設立されるなど,照射サービス機関設立の動きがみられた。
 このような放射線利用の著るしい実用化への進展とならんで,各分野での研究開発も積極的に推進されているが,特に44年度においては速中性子線照射によるガンの治療について研究の推進がはかられたほか,食品照射(第7章参照)についても従来から進められていた馬鈴薯,玉ねぎ,米,ウインナーソーセージの照射試験に加えて,小麦,水産ねり製品についての研究が進められている。
 このほか,使い捨て医療器具の放射線滅菌法については輸出用としてすでに広く行なわれているが,国内使用についても,現在厚生省を中心に検討がすすめられている。
 一方,放射線利用の実用化の進展にともなって,わが国のラジオアイソトープの需要も毎年増加しており,国内でも日本原子力研究所(原研)を中心として短寿命核種に重点をおきその量産化をはかる一方,新たな核種の製造についても開発を進めている。
44年度のラジオアイソトープの供給状況は(第6-1),(6-2表)に示すとおりである。


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