§1 原子力発電所の建設

  2原子力発電所建設の進捗状況

昭和45年3月現在,わが国で稼動している商業用原子炉は,日本原子力発電(株)の東海発電所(コールダーホール改良型炉,電気出力166,000キロワット)および福井県敦賀市にある同社の敦賀発電所(沸騰軽水型炉(BWR)電気出力331,000キロワット)の二つである。
 東海発電所はわが国最初の原子力発電所で,昭和35年に着工し,42年7月以降全出力営業運転に入っており,44年度の運転時間は,5,805時間,発電量は7億9,942万キロワット時となっている。
 敦賀発電所も41年4月から米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社,ゼネラルエレクトリック・テクニカル・サービス社(GETSCO)との一括契約により,その建設を進めていたが,44年10月,臨界に達し,45年3月から営業運転を開始した。
 東京電力(株)では福島県双葉町および大熊町に福島原子力発電所の建設を進めているが,同発電所1号炉(BWR,46万キロワット)については,41年12月から米国GE社,GETSCO社に一括発注方式で契約し,45年10月の運転開始を目標にし,工事を進めている。45年3月末現在の工事進捗率は92%である。
 また同発電所の2号炉(BWR,78万4000キロワット)についても43年3月より1号炉と並んで建設をすすめており,45年3月末現在の工事進捗率は38%である。2号炉の建設は個別発注方式で行なわれており,原子炉蒸気系統,タービン発電機等主要機器をGE社に,その他付属機器を東京芝浦電気(株)(東芝)に,発電所本館建屋の建設を鹿島建設(株)に,それぞれ発注している。
 また同発電所の3号炉(BWR,78万4000キロワット)についても,45年1月その設置が許可されたが,3号炉については2号炉で修得した経験をもとにして大幅な国産化を図ることとし,現在東芝を主契約者として,機器購入契約を準備中である。
 関西電力(株)でも福井県三方郡美浜町に美浜発電所の建設を進めているが,1号炉(加圧軽水型炉(PWR),34万キロワット)については41年12月に着工し,45年10月の運転開始を目ざし建設が進められており,2月末現在の進捗率は93%である。1号炉の建設は原子炉専門を米国のウテスチング・ハウス社(WH)が,発電設備を三菱原子力工業(株)が,それぞれ行なっている。
 また同発電所の2号炉(PWR,50万キロワット)についても43年5月から建設が進められているが,45年2月末の進捗率は37%に達しており,運転開始予定は47年6月となっている。この2号炉は三菱原子力工業(株)と一括発注方式による契約で建設が進められており,原子炉の国産化が急速に進展していることを示している。
 さらに関西電力(株)では,福井県大飯郡高浜町に高浜発電所(PWR,82万6000キロワット)を建設することとし,その準備を進めていたが,44年12月,その建設に着手し,49年8月の運転開始を目標とし現在建設工事が進められている。同発電所は原子炉設備を米国WH社が,発電設備を三菱重工業(株)が,それぞれ建設することになっている。
 また中国電力(株)では島根県八束郡鹿島町に島根原子力発電所(BWR,46万キロワット)の建設準備を進めていたが,44年10月原子炉の設置が許可され,現在,その建設工事が本格的に進められている。同発電所の主契約者は(株)日立製作所(日立)で,これまでのBWR建設の経験を生かし,国産比率も90パーセントに達している。
 このように原子力発電所の建設は逐年増加の一途をたどっており,45年3月末の運転中の原子炉の総電気出力は49万7000キロワット,建設中のものは415万4000キロワットに達している。
 将来の原子力発電について,45年5月,発表された,電源開発調査審議会の長期目標によれば原子力発電容量は昭和50年度末,866万キロワット,昭和55年度末2702万キロワットとしており,原子力委員会が42年4月,長期計面において見通した昭和50年度末600万キロワット,昭和60年度末,3000ないし4000万キロワットという見通しを上回るすう勢にあると言えよう。


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