第14章 原子力関係予算

 わが国の原子力開発利用の進展にあいまって,国の原子力関係予算も逐年大巾に増加している。とくに43,44年度においては動力炉開発が本格化したため,予算規模は一段と増大し,44年度においては300億円の大台を越え,過去10年間におよそ4倍となっている((第14-1図参照))。

 昭和44年度原子力関係予算の総額は,現金額302億円,債務負担行為256億円である。これを43年度と対比すると,現金額で91億円(43%)の増額を示した。
 44年度末の定員は,科学技術庁原子力局およぴ水戸原子力事務所が144名で,43年度末に比較し1名減,科学技術庁放射線医学総合研究所(放医研)は407名で1名減,また,日本原子力研究所(原研)が,2,153名で,18名増加し,動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)が,1,031名で130名増,日本原子力船開発事業団(原船事業団)が97名で12名増となっている。
 これから44年度未における定員の合計は3,832名で,43年度末より158名の増加となっている。
 44年度予算の内訳は,付録IIIに示すとおりであるが,その主な事項は次のとおりである。

 (1)日本原子力研究所
 原研の予算額は,現金額9,888百万円であり,このうち,国庫支出額は9,539百万円である。
 なお,債務負担行為は1,363百万円である。

  イ材料試験炉の建設および運転

 在来型炉の国産化に資するため,材料試験炉の運転およびホットラボラトリー等の付属施設の増設を行なうため,現金額1,724百万円,債務負担行為654百万円が計上された。
  ロ動力試験炉の改造
 在来型炉の国産化に資する一環として,動力試験炉の出力を倍増する計画(JPDR-II計画)をひきつづき推進するため,現金額442百万円,債務負担行為57百万円が計上された。
  ハ原子炉の運転等
 研究用原子炉を活用し,ひきつづき材料試験,遮蔽試験,アイソトープ製造および要員訓練等を行ない,これに必要な整備を行なうため,現金額430百万円,債務負担行為13百万円が計上された。
  ニ原子炉等の研究開発
 高速炉の炉物理実験,ナトリウム技術の研究,安全性,燃料材料等の基礎研究をすすめるとともに原子力特定総合研究として核融合の研究開発を実施するため,現金額1,130百万円,債務負担行為170百万円が計上された。
  ホ放射線化学の研究開発
 高崎研究所において,放射線化学の研究開発を行なうほか,原子力特定総合研究として食品照射研究開発の促進をはかるため,共同利用施設の整備に着手する。このため,現金額43百万円,債務負担行為29百万円が計上された。
(2)動力炉・核燃料開発事業団
 動燃事業団の予算額は,現金額16,600百万円であり,このうち,国庫支出額は15,467百万円である。
 なお,債務負担行為は22,580百万円である。

  イ動力炉の開発
 高速増殖炉については,実験炉の詳細設計を完了し,昭和48年度当初に臨界にいたらしめることを目標に建設に着手する。また原型炉の第一次設計研究をすすめるとともに,前年度にひきつづき炉物理,ナトリウム技術,燃料材料等の研究開発を行ない,また,α-γケーブ,ナトリウムループ等の建設をすすめ,また,新型転換炉については,原型炉の第二次設計研究を完了するとともに,原型炉の建設に関する評価検討を実施し,これと並行して前年度にひきつづき炉物理実験,伝熱流動実験等を行ない,さらに重水臨界実験装置大型熱ループ等の建設をすすめるため,現金額13,397百万円,債務負担行為22,430百万円が計上された。
  ロ使用済燃料の再処理
 使用済燃料再処理施設の建設準備をすすめるとともに,運転要員の養成訓練を行なうため,現金額37百万円が計上された。
  ハ核原料物質の探鉱
 国内において探鉱および海外現地調査を行なうため,現金額177百万円が計上された。
  ニ核燃料の技術開発等
 プルトニウムの熱中性子炉および高速炉への利用に関し,混合酸化物燃料の製造技術開発等を行なうほか,遠心分離法によるウラン濃縮の研究開発等を行なうため,現金額1,856百万円,債務負担行為151百万円が計上された。
 (3)日本原子力船開発事業団
 47年前半における完成を目途に,原子力第一船の建造,付帯陸上施設の建設,乗組員の養成訓練等を行なうため3,025百万円が計上された。うち国庫支出額は2,442百万円であり,債務負担行為は,1,442百万円である。

 (4)放射線医学総合研究所
 放射線障害の防止に関する基礎研究を行ない,とくにプルトニウムによる内部被曝に関する研究および造血器移植に関する研究をすすめる。また,放射性廃棄物の海洋処分に関する調査研究を行なうため,新たに茨城県那珂湊市に臨界実験場を設置するほか,電子計算機棟の建設に着手する。このため現金額82百万円が計上された。

 (5)国立試験研究機関
 放射線の利用,核融合,障害防止等に関する研究をひきつづき行なうため,現金額610百万円が計上された。

 (6)原子力平和利用研究の助成等
 在来型炉の国産化等に重点をおいて民間の研究を助成し,また,原子力特定総合研究の推進,原子力施設の安全対策,放射性廃棄物の処理処分に関する研究等を民間に委託するため,現金額240百万円が計上された。

 (7)核燃料物質の購入等
 原研,大学等において原子炉用および研究用等に使用される核燃料のうち,濃縮ウラン等の購入,借入れなどのため,現金額127百万円,債務負担行為65百万円が計上された。

 (8)科学技術者の資質向上
 原子力技術者の海外派遣および国内研修のため現金額50百万円が計上された。

 (9)放射能測定調査研究
 環境,食品,人体等に関する放射能の調査および研究ならびに原子力軍艦の寄港にともなう放射能調査を強化するため,現金額176百万円が計上された。

 (10)理化学研究所
 サイクロトロンによる研究,核融合の研究等をひきつづき行なうほか,放射性同位元素実験棟の建設を行なうため,現金額170百万円,債務負担行為124百万円が計上された。

 (11)原子力発電所立地調査
 原子力発電所の円滑な立地に資するため,新たな地点について地質および気象の現在調査をひきつづき実施するため,現金額6百万円が計上された。

 (12)水戸原子力事務所
 茨城県内の原子力施設の安全確保,放射線監視等をひきつづき行なうため,現金額7百万円が計上された。

 (13)原子力委員会,放射線審議会,原子力局
 原子力施設の安全確保,日米協力,各種調査,保障措置関連施策,ENEA共同事業参加,国際会議の招致等を行なうとともに,原子力開発利用の広報啓発を行なうため,現金額132百万円が計上された。

 (14)東海地区原子力施設地帯整備
 茨城県東海村周辺地区について,原子力施設が集中している特殊事情にかんがみ,道路の整備等に必要な経費として国庫補助額223百万円が計上された。

 (15)各省庁行政費
 関係各省庁が行なう原子力発電所または原子力船に対する規制等に必要な原子力関係行政費は,それぞれの省庁の予算に計上されるが,その総額は,現金額226百万円である。


目次へ          1.1原子力委員会へ