第13章 その他の活動

§1 原子力関係機関体制問題懇談会の報告

 わが国の原子力開発利用は,原子力委員会を中心とする体制のもとに,着実に成果をあげ,すでに10余年を経過した。この間,原子力開発利用に関する情勢も進展し,最近では,原子力発電の経済性の向上,放射線利用の普及,核燃料の民有化等,新たな段階を迎えつつあり,これらの状況をふまえて,わが国の原子力開発利用を一層強力に推進するため,原子力関係機関の体制を再検討することとし,原子力委員会は,43年3月,原子力関係機関体制問題懇談会を設置した。
 同懇談会は,原子力委員会委員のほか,産業界等の有識者をもって構成され,わが国の現在の原子力開発体制について概要を把握し,ついで米国,英国等欧米諸国における原子力開発体制との比較検討が行なわれ,さらに,わが国の現体制に関する国会審議および学界,産業界,関係団体等の意見を参考としつつ,問題点の把握が行なわれた。
 懇談会は,44年7月までに14回の審議を重ね,同年8月報告書を取りまとめた。
 同報告書は,わが国の原子力の研究開発および利用に関する基本的考え方として,第一に,わが国における原子力の研究,開発および利用は,原子力の平和利用による産業基盤の強化と科学技術の振興を目的として,これを推進すべきであること。第二に,原子力の平和利用は現在のわが国の経済体制のもとに,原則として国と民間が協力して推進すべきものであり,それぞれの限られた資金と人材を,できる限り集中して効率的に活用する必要があることとし,原子力委員会については,原子力委員会の性格は現状通りとし,その課された任務を一層十分に遂行するため,機構上の改善を図るべきであること,原子力委員会に委員会の調査事務に専従する調査資料室を設けること,原子力に関する主要な分野に,常設の部会を設置して,主として原子力委員のブレーン的役割を果たさせること,および原子炉安全専門審査会に調査委員をおくこと,さらに,原子力研究開発機関については,日本原子力研究所(原研),動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)および日本原子力船開発事業団(原船事業団)の3法人による現在の研究開発体制は前述の基本的な考え方に立脚して,今後も維持してゆくべきであること等についてふれている。
 この報告にもとづき,45年度から調査資料室および常設部会が設置されることになっている。


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