第11章 国際協力

§1 概要

 昭和44年度における原子力開発利用に関する国際協力は,前年度にひきつづき国際原子力機関(IAEA)を中心とする多国間協力ならびに,米国,欧州,その他の国に対する二国間協力について積極的な努力を行なった。
 さらに,本年度は,核兵器不拡散条約(NPT)が3月5日発効したことにともない,同条約が原子力の平和利用に及ぼす影響,特に保障措置の問題に関し活発な活動が行なわれた。
 このほかわが国からの海外調査,留学生の派遣および海外技術者のわが国への受入れ等の業務も,これまでにひきつづき実施された。
 多国間協力として,IAEAについては,年1回の総会,年4回開催された理事会に,いずれもわが国より代表を派遣して討議に積極的に参加し,またその他の活動にも協力した。本年度におけるIAEAの活動の中心は,NPTのもとにおける保障措置の問題であり,このためIAEAが実施すべき保障措置の今後の進め方について45年2月理事会の席上,米英より決議案が出され,4月の特別理事会において議決された。
 これによって,NPTの下においてIAEAが実施すべき保障措置の態様についての議論が一段階進ちょくし,45年度には,内容の検討に移ることになる。
 これに伴い,わが国は,45年2月3日のNPT調印に際し,政府声明を発表し,わが国の意向を内外に表明した。
 一方,二国間協力も44年度は著しく活発化した。日米,日英,日加関係については,44年度内において,それぞれ原子力会議を開催し,米国から供給された濃縮ウランの増量など,実質的な成果をあげた。このほか,フランス,ドイツなどとの間でも原子力関係者の相互訪問があり,これら先進国との協力関係の進展がはかられた。
 一方,開発途上国との協力についても44年度においては,原子力委員会はアルゼンチン,インドの各原子力委員長を招へいし,また,東南アジア極東の諸国からの関係者の来日もあいつぎ,国際協力関係は密接になってきた。
 このように,わが国の原子力に関する国際協力は,IAEAを中心とする多国間協力,先進国との相互協力,開発途上国に対する技術援助を中心とした協力の三種類の態様に応じて実施された。
 このほか,動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団),日本原子力研究所(原研)などにおいて米国,英国,フランス,ドイツ等の原子力機関との協力が,高速増殖炉開発,核燃料開発,放射線利用などの分野で積極的に行なわれた。


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