§2 原子炉の設置と運転にともなう安全対策

1 動力炉安全基準専門部会の設置

 わが国における原子力発電の進展にともない,現在までの審査経験の整理等による安全設計の基準の整備について検討をすすめる必要が生じており,また,動燃事業団における動力炉開発の推進にともなって高速炉等の新しい動力炉について安全審査の方法をあらかじめ検討しておく必要も生じている。
 このような観点から,原子力委員会は,43年2月,安全審査の問題点および解決の基本的な方向を検討するため,原子炉施設安全問題懇談会を設置した。同懇談会は,軽水炉に関する安全設計の基準,高速炉等に関する安全審査およびその他安全審査にかかわる重要事項について審議を重ね,その結果を43年8月,原子力委員会に報告した。
 原子力委員会は,同報告書の提案にもとづき,原子炉施設の安全上の問題をさらに詳細に検討するため,43年10月,動力炉安全基準専門部会を設置した。
 同専門部会は,学界,研究機関,関係民間企業等の有識者34名をもって構成されており,43年12月に審議を開始し,諮問事項に応じて,(1)軽水炉についての安全設計に関する審査指針の策定,(2)現行原子炉立地審査指針の具体的な適用に必要な事項に関する検討,整備,(3)プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価上必要なプルトニウムに関する目安線量等の策定,(4)新型動力炉の安全審査指針の検討,(5)原子炉設置許可申請書の記載のあり方の検討をそれぞれ審議するため5つの小委員会が設置され,審議がすすめられている。

2 原子炉の安全審査

 原子炉については,設置また設置変更を行なう場合,内閣総理大臣の諮問により,原子力委員会において厳重な審査が行なわれている。
 このうち,とくに安全性にかかわる事項については,原子炉安全専門審査会において専門的な調査,審議を行ない,原子力委員会は,その報告をうけて,安全性以外の許可基準についても審議したうえ,内閣総理大臣に答申することになっている。
 原子炉安全専門審査会は,43年度は,11回開催され,20件の原子炉の設置または変更について安全審査を終了した。その概要は付録IV-2に示すとおりである。

3 原子炉の設置許可および検査

原子炉を設置し,または設置の変更をしようとする者は,原子炉等規制法にもとづき,その設置または変更について,内閣総理大臣の許可をうけ,さらに,発電用原子炉および舶用原子炉以外の原子炉については原子炉等規制法にもとづき,建設工事の着手前に設計および工事の認可,工事の施行過程および完成時に施設検査および性能検査をそれぞれ受けなければならないことになっている。
 また,発電用原子炉については電気事業法により,舶用原子炉については船舶安全法により,それぞれ所要の認可,検査等を受けなければならないことになっている。
43年度に新たに設置が許可された原子炉は,関西電力(株)美浜発電所の2号炉,三菱原子力工業(株)の三菱臨界実験装置(MCF),動燃事業団の臨界実験装置(ATRC)および東京大学の原子炉(高速中性子源炉)の4基であり,43年度末までに設置が許可された原子炉は,臨界実験装置を含め30基となった。原子炉設置の年度別の許可状況は,(第9-1表)に示すとおりである。

 なお,わが国における原子炉の設置状況は,付録(IV-1)に示すとおりである。
 また,原子炉の設置および設置変更にともなう認可および検査については,科学技術庁原子力局は,原子炉等規制法にもとづき,約30件の認可を行なうとともに,それにともなう数多くの使用前検査を行なったほか,原子炉施設の機能保持のため,年1回の定期検査を各原子炉について行なった。
 また,発電用原子炉については電気事業法,原子力第一船については船舶安全法にもとづき,所要の認可および検査等が関係省庁において行なわれた。


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