第8章 試験研究用原子炉の整備,運転
§1 臨界実験装置

1 半均質臨界実験装置

 日本原子力研究所(原研)の半均質臨界実験装置(SHE)は,半均質炉の開発を目的として設置されたが,すでに所期の実験を終了し,現在では,炉物理実験等が行なわれている。昭和43年度は,炉心中央部に微濃縮ウラン軽水減速格子系(ウラン濃縮度2.7%,ウラン密度3.8g/cm3,発泡ポリエチレンによる減速材模擬)が設けられ,軽水系格子定数の測定等が行なわれた。

2 水性均質臨界実験装置

 原研の水性均質臨界実験装置(AHR)は,水性均質炉の開発を目的として設置されたが,すでに所期の実験研究を終了したので,42年にこれを廃止することとし,解体された。

3 軽水臨界実験装置

 原研の軽水臨界実験装置(TCA)は,軽水型炉の開発に資するため設置された。
43年度は,プルトニウムの熱中性子炉への利用に関する炉物理実験および解析を目的として,ハルデン炉へ送る照射試料(プルトニウム燃料)の出力分布,ピーキング係数,反応度効果等の測定が行なわれ,また,44年2月からは,プルトニウム燃料を装備した炉心の臨界実験,中性子分布の測定等が行なわれている。このほか,軽水炉の核設計法の実験的確認を目的として,模擬ボイドによる中性子束分布,出力分布測定,JPDR-II計画に資するためのコーナーロッド実験等が行なわれた。

4 材料試験炉臨界実験装置

 原研の材料試験炉臨界実験装置(JMTRC)は,原研大洗研究所に建設中の材料試験炉(JMTR)に必要な資料をうるために設置された。43年度は,炉心内の熱中性子束分布に関する検討,ノイズ法による出口較正法の研究,JMTRCのデータをJMTRに使用する場合の補正に関する検討等が行なわれた。

5 高速炉臨界実験装置

 原研の高速炉臨界実験装置(FCA)は,高速増殖炉開発の一環として,とくに炉物理問題を実験的に解明するため設置された。43年度は,42年度に引きつづき,中速エネルギー系および希釈系についての炉物理実験が行なわれ,非均質効果,ドップラー効果,動特性等の研究とともに,高速実験炉のモックアップ試験がすすめられた。
 また,本実験装置は,プルトニウム系高速炉心の研究を行なうため,プルトニウム・アルミニウム合金燃料およびプルトニウム酸化物燃料を使用し, 熱出力を2キロワット(従来100ワット)に上昇することとし,設置変更許可を申請していたが,44年2月に許可された。今後,プルトニウム燃料を用いた炉心に関する各種の研究および高速実験炉のモックアップ試験が行なわれる予定である。

6 日立製作所臨界実験装置

 日立製作所の臨海実験装置(OCF)は,軽水炉における炉物理実験,炉定数の研究のため設置された。43年度も,42年度に引きつづき,計算機によるオン・ライン・データ処理実験,原子炉伝達関数測定等が行なわれた。
 また,本実験装置は,煉炭型燃料に関する炉工学炉物理的研究を行なうため,設置変更許可を申請していたが,43年11月許可され,現在改造がすすめられている。

7 NAIG臨界実験装置

 日本原子力事業(株)の臨界実験装置(NCA)は,水型炉の研究を目的として設置された。43年度においても,制御棒反応度測定,矩形炉心における臨界実験と温度係数測定実験等が行なわれた。

8 住友臨界実験装置

 住友原子力工業(株)の臨界実験装置(住友CA)は,軽水炉の炉工学,炉物理的研究を行なうため設置された。
 43年度は,とくに動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)から「新型転換炉の炉物理定数の測定」について委託をうけ,43年1月に変更許可を得た領域炉心について43年4月に改造に着手し,43年8月に完成した。44年3月までに22.5センチピッチ炉についての実験を終了し,今後は25センチピッチ炉心について実験が行なわれる予定である。

9 三菱臨界実験装置

 本臨界実験装置(MCF)は,三菱原子力工業(株)が,原子力第一船の炉心設計および軽水炉の炉工学,炉物理的研究を行なうことを目的として,埼玉県大宮市に設置しようとするもので,43年7月に設置が許可された。これに対し,地元住民から行政不服審査法にもとづく異議の申立てが行なわれたが,内閣総理大臣は,理由なしとしてこれを棄却した。その後,会社側と地元住民との話し合いの結果,円満に解決し,44年6月には臨界に達する見込みである。
 なお,本実験装置は,濃縮ウラン軽水減速型で熱出力は20ワットである。

10 新型転換炉臨界実験装置

 本実験装置(DCA)は,動燃事業団が新型転換炉に関する炉物理基礎データおよび安全系に関するデータを得ることを目的として,茨城県大洗町に設置しようとするもので,43年11月に設置が許可された。同年12月工事に着工し,44年12月ごろには臨界に達する見込みである。
 本実験装置は,濃縮ウラン重水減速軽水冷却型で,熱出力は1キロワットである。


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